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あなたはマンガ家という職業にどんなイメージを抱いているだろうか? 夢がある。アシスタントと一緒に朝まで徹夜する。編集者が遅れた原稿を取り立てに来る――。確かに、それがふつうのマンガ家像だ。しかし、三田紀房は正反対の持論をしばしば展開する。「徹夜はしない。でも締め切りは守る」「マンガ家になったのはお金のため」「アイデアを得る努力をしない」。びっくりするかもしれないが、理由を聞けばきっと納得し、あなたの仕事や勉強にも役立つ話だと気が付くだろう。さっそく、三田流マンガ論をお聞かせしよう。

☆インタビューカット


【マンガ論 Vol.7】

・世の中はみんな、ケンカを見るのが大好き
・カネと高校球児。かけ離れているものの組み合わせが個性を生む
・基本に従え! 腕の見せ所は「応用」だ


前回述べた通り、マンガ連載がスムーズに進むかどうかは、企画段階でいかに面白い構想を作れるかにかかっている。そう言うと大体、「じゃあ最初の企画をどういう風に考えればいいのか」と聞かれるが、これも至ってシンプル。あれこれ考え込まず、基本に従えばいい。

まず、手っ取り早いのは「対立」の構図をつくること。ストーリーを作る練習をしたいなら、これは基本だと思ったほうがいい。

世間の多くの人々が、好んで対立を見ている。
野球なら攻撃と守備の争いを見て手に汗握り、報道番組では保守派と革新派の論争を面白がって見る。もっと身近なことでいえば、会社のうわさ話だって、上司の派閥争いや同期の出世競争をめぐる話を興味津々で聞きたがる。マンガも同じで、『巨人の星』は星飛雄馬と一徹の壮大な親子ゲンカだし、『あしたのジョー』は矢吹丈と力石徹のライバル同士の闘いが根底にある。

世の中の面白いものは、ほとんど対立の構造でできている。
要は、みんなケンカが好きなんだ(笑)。

では、どうやって対立をつくるか。ネタはいくらでもあって、親子、兄弟、恋人、学校や会社の中など、人間関係があるところ全てに対立が起こり得る。どういう関係の人々が、どういう価値観の違いで対立するのか。いくつかパターンを考え、面白いものを選んでいけばいい。そうやって対立のネタを決めたら、あとは主人公がその対立をどう乗り越え、解決していくかでストーリーを展開させていけばいい。

『インベスターZ』は、「お金儲けは悪」という世の中の価値観に対して、投資部の子供たちが真っ向から刃向うところが面白い。途中からは主人公・財前のライバルである慎司が登場し、2人が投資で勝負をしながら成長していくストーリーも入ってくる。対立という基本を守りつつ、子供が巨額のお金を運用するという設定にしたところに新しさがある。

☆マンガ1(1)
☆マンガ1(2)


『アルキメデスの大戦』はもっとわかりやすい対立構造だ。第二次世界大戦前、国産の大型戦艦の建造をめぐって、「図体の大きな戦艦はこれからの時代に必要ない」と言う山本五十六の派閥と、「後世に名を残すような世界最大の大型戦艦を作る」と言う平山忠道の派閥争いが軸になっている。この構図の中で、主人公の天才数学者・櫂直が山本五十六の側について、数学の力を使って頭脳戦で戦うところが面白い。

☆マンガ2(1)
☆マンガ2(2)

もう1つ、私が企画を立てるときに意識しているのは、「要素を掛けあわせる」ことだ。
例えば、高校野球をテーマにしたマンガを描きたいと言っても、そんなものは掃いて捨てるほどある。何か新しい要素を掛け合わせなければ、企画として成立しない。そこで「お金」をからめて、高校球児が支援者から1000万円を託されて甲子園を目指すという設定で描いたのが、『砂の栄冠』だ。

☆マンガ3(1)
☆マンガ3(2)

☆マンガ3(3)

また、『ドラゴン桜』は「受験競争」というテーマに、スポ根の要素を組み合わせている。桜木の指導は基本的につめ込み教育で、鬼監督が主人公たちを鍛え上げるスポ根マンガと同じ発想だ。

「高校野球」と「お金」。「受験戦争」と「スポ根」。
最大限、離れている2つのものを組み合わせる。2つの間にギャップがあればあるほど、マンガに強烈な個性が生まれる。そして、その個性に読者は魅かれるのだ。

ただし、ここでいう意外性やギャップは、決して「現実的にあり得ないこと」であってはいけない。
たとえば『ドラゴン桜』で、数学の公式を覚えるのに水風呂に入れとか、そういう非現実的なシーンは出て来ない。意外であっても「あり得る話」程度にとどめておくことが重要なのだ。

例えばマンガの中で、卓球の素振りをしながら公式を覚えるシーンがある。これは、「高等教育で数学が苦手な子は、そもそも計算力が弱くて基礎教育の時点でつまずいている」という情報に基づいている。そんな生徒が数学の遅れを取り戻すためには、卓球を使った反復練習で計算を身体に覚えこませればよい。このようにシーンを作っていくのであって、あくまで現実に基づいた飛躍でないと、読者はついていけなくなってしまう。



☆マンガ4(1)
☆マンガ4(2)

対立を作ることと、要素を掛け合わせて意外な組み合わせを作ること。
どちらもシンプルで基本的な方法だが、だからこそセンスが試される。
基本を外さず、繰り返し実践して応用を重ねることで、強い個性をもつ企画を立てることができるのだ。

■三田流漫画論シリーズ

【vol.1 三田流マンガ論】成功するには、あえて「空席」を狙え!
【vol.2 三田流マンガ論】どうせやるならトップを目指せ!
【vol.3 三田流マンガ論】ベタな表現を恐れるな!
【vol.4 三田流マンガ論】徹夜は一切しない!
【Vol.5 三田流マンガ論】クリエイターは「凄い」人たちではない。ただ「やった」人間だ!
【vol.6 三田流マンガ論】私は、締め切りを絶対に破らない!
【vol.7 三田流マンガ論】ストーリーとは、「対立」とその「解決」である
【Vol.8 三田流マンガ論】アイデアは考え出すものじゃない
【Vol.9 三田流マンガ論】マンガを描き続けることが最優先。些末なこだわりは持たない
【Vol.10 三田流マンガ論】いい仕事したけりゃ、自己管理しろ!


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