財前のように家賃が交渉できるという事実を知らなかった人も多いのではないだろうか。しかし、不動産のプロが紹介する家賃交渉術によって、ワンランク上の賃貸物件と契約することも夢ではない!
今回は長年不動産業界に勤め、現在は不動産に関する情報を配信しているポータルサイト「グッドホームナビ」を運営している森山氏に、業界のカラクリをすべて知り尽くしているからこそ語れる「家賃交渉における極意」を伺った。
「交渉だけなら100%どの賃貸物件でも値下げを打診できる」「家賃交渉は、物件を内見するときに切り出すのがベスト」など、わたしたちがこれまで知り得なかった、交渉の際に使える有益な情報が満載だ。是非、部屋探しを検討している人は参考にして欲しい。
家賃は基本的に交渉できるもの
若い家主であれば、値下げ交渉にも柔軟に応じる
家賃交渉に関してですが、多くの人はできないと思っているようです。しかし、実は交渉だけなら100%どの賃貸物件でも値下げを打診することができるんです。ただし、値下げ交渉したからといって必ず家賃が下がる訳ではありません。私の経験からいうと、取扱いしている賃貸物件の2割~3割程度の物件なら値下げ可能ですね。値下げの金額ですが、これには適正な額というのものはなく、物件(家主)次第です。
5万円の家賃だったら、3,000円くらいから交渉して2,000円ほど安くなれば御の字。5万円以上の物件だったら5,000円くらいから交渉して、3,000円~5,000円の値下げに成功すれば御の字ではないでしょうか。
値下げ交渉したからといって必ず家賃が下がる訳ではないと言いましたが、やはり値下げできる物件と値下げできない物件があります。その理由はいったい何かと言うと、単純に家主の考え方にあります。ご年配の家主は値下げには慎重ですし、比較的若い家主は値下げ交渉にも柔軟に対応してくれるケースが多いですね。
例えば6世帯ほどのファミリー向けハイツやコーポの場合、家賃を5,000円値下げしてしまえば、「5,000円×6世帯=30,000円/1ヶ月」の減収になりますので、1年間で考えると36万円も収入が減ってしまいます。年配の家主の方であれば、これを非常に大きな痛手と考えるようです。
それに比べ、比較的若い世代の家主は、もっと合理的な考えを持っています。たとえ、6世帯すべての家賃を5,000円値下げしても、先ほど計算したように年間の損失は36万円。
一方で、もしこの賃貸物件が家賃10万円だったとしたら、4ヶ月入居者が決まらなければ「10万円×4ヶ月=40万円」の減収となります。
そう考えると、例え全世帯の家賃を下げたとしても、4万円分の損失を軽減できるため、早めに入居者が決まるのなら損はしない、という考え方になるわけです。
それに実際には、他の入居者にバレて全ての世帯を値下げするという可能性は低いので、1世帯だけ家賃を下げてでも早期に入居者を確保したいという思いが強いのでしょう。また若い世代の家主の場合、親から相続した物件などでなければ、まだ借入れ金(住宅ローン)の返済が続いているはずなので、1世帯でも空室があると返済そのものが厳しくなるという理由があります。そのため、年配の家主よりも値下げには柔軟な考えを持っている人が多いのです。
家賃交渉しやすい物件と
絶対に失敗しない交渉の肝
一般的には、長期空室物件などが交渉できる狙い目物件だと言われています。確かにそういう見分け方もありますし、値下げ交渉に成功する可能性は高いです。ただここだけの話、表では「見分ける方法はありません」としか言えませんが、実は不動産会社の営業マンは「この物件は値下げできるだろうな」とか、「この物件は値下げ交渉しても家主に断られるだろうな」というのはある程度把握しています。
しかし、営業マンの方から「この物件は値下げできるかもしれませんよ」という話をすることは原則ありません。なぜなら、もしそう言っておいて家主に値下げを断られてしまったらクレームにつながる恐れがあるからです。ですから、「これは90%値下げ可能だろう」と思われる賃貸物件だとしても、営業マンから値下げの話を切り出すことは滅多にないので、借主側が勇気を出して「値下げ交渉をして下さい」と言う必要があります。
また、いざ家賃交渉をしようとする際、交渉を切り出すときのタイミングが実は非常に重要なんです。よく言われるのは「契約書を交わす時」ですが、これは大きな間違いです。契約には基本的に家主は同席しませんし、今さら感が強いのでおすすめしません。
特にどのタイミングがベストだというのはありませんが、しいて言うなら「物件見学をしている時」に切り出すのが良いと思います。
部屋を内見した際には、必ず営業マンから「どうですか?」と感想を尋ねられると思うので、本当に良いなと思っている物件であれば、「良いですね!でも少しだけ家賃がオーバーしているので、なんとか○○円まで値下げしてくれるように相談してもらえませんか?もし、今すぐ下げてもらえるようだったらココに決めます!」という言い方をすると、営業マンも家主に相談しやすいです。
営業マンとしても、契約に至るかどうかがはっきりしていないのに、家主に対して値下げ交渉をするというのは気が引けます。
だからこそ、「値下げしてくれるなら契約する」という交換条件を提示することで、営業マンにとっても、家主にとっても強い後押しになります。逆に、すでに契約することがまとまった段階で値下げ交渉を切り出しても、相手からすれば悪印象にしかならないので、注意したいところですね。
不動産営業マンは
家賃交渉における重要なキーマン!
値下げ交渉の決め手は、ズバリ営業マンと家主の信頼関係です。家主の多くは贔屓にしている営業マンがいます。
例えば相談ごとやクレームなどがあるときに、名指しで電話をしてくるのですが、そういう営業マンは家主に好かれているというか、家主が信頼している営業マンなんです。
同じ会社の他の営業マンが「値下げ希望のお客さんがいるんですけど…」と電話をしても断られますが、信頼されている営業マンが電話をしてお願いしたら、「いつもお世話になってる○○さんのお願いだったら断れないね」と言って、いくらかの値下げに応じてくれたりします。
ですから、極端な例ですが、自分が個人的に良くお世話をしている家主さんであれば、「私個人が借ります」と言えば、100%家賃の値下げをしてもらえる自信があります。
また私の家族や、懇意にしている友人が借りると言っても、ほぼ確実に値下げしてもらえることでしょう。
つまり、借主側の立場から考えた場合、なるべく「その物件の家主さんと仲が良い営業マン」に依頼するのが成功率アップのコツとなります。
まとめ
・家主が若い物件は狙い目!
・家賃交渉は物件内見時に切り出せ
・交渉を依頼するなら、家主とのパイプが太い営業マンを選べ!
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【プロフィール】
森山 祐一(もりやま ゆういち)グッドホームナビ管理人。
大手アパート会社で建築営業として3年勤務。入社一年目で6棟(7億3000万)の契約を取り社長賞を授与される。その後、ハウスメーカーで営業職5年、不動産会社で管理職として4年勤務。現在は、不動産会社とハウスメーカー、リフォーム会社などを繋ぐ会社を立ち上げ、いまだに古い体質が残る不動産業界に、インターネットを使った新しいネットワークの構築を目指している。
関連サイト:グッドホームナビ
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