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2017/01/16

個性を120%発揮する人間こそが 世界を変えるリーダーになる(後編) ~伝説の投資家・谷家衛インタビュー

米ソロモン・ブラザーズでアジアの投資の責任者としてアジア最年少のマネージングディレクターとなった大物投資家であり、起業家。ライフネット生命など名だたる事業の仕掛人という経歴を聞くと、「野心的な成功者」というイメージをつい持ってしまう。しかし、谷家衛氏のインタビューは意外な問い掛けから始まった。「幸せとは何か――?」彼がいま、新会社「お金のデザイン」でやろうとしていることは、何なのか。谷家氏の哲学に裏打ちされた話に耳を傾けよう。



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谷家 衛氏
お金のデザイン ファウンダー

食うに困る生活では
個性も発揮できない

これからの日本は、資産を減らさずに運用するのが大変な社会になっていきます。

1990年代以降、「デフレ・円高・財政健全」という条件の下で人々が円の貯蓄にお金を回していたのは、ある意味で正しい選択でした。しかし、これからは「超高齢化・人口減・マイナス金利」の時代です。円の貯蓄だけでは、生活水準を維持することが難しくなるでしょう。

子どもたち、若い人たちに個性を120%発揮してほしいと思っても、食うに困る生活だったら、そんなことを言っていられません。どんなに素晴らしい才能も、お金がなければ行き詰ってしまう。良き社会を作るリーダーを育てたいと思ったら、教育だけでなく、資金面でのサポートも整えなければいけません。

そこで、私は「お金のデザイン」という会社を起業し、個人向けのオンライン投資サービス「THEO(テオ)」を始めました。THEOでやろうとしているのは、世界経済の成長を個人の資産運用に取り込むこと。今後、国内は縮小しても、地球全体では人口が増えて経済も成長します。ですから、伸びそうな海外の地域、金融商品などに分散して資産運用するのがベストですが、手間とコストが莫大にかかるため、これまではプライベートバンクを雇える一部の資産家にしかできませんでした。

しかしいま、ITの進化によって、ロボ・アドバイザーがプライベートバンクのように個人をサポートできるようになりました。われわれが開発したテオは、世界6000種の金融商品で国際分散投資をしています。最低投資額は10万円で、資産家である必要はまったくありません。これは、人間のトレーダーが運用していては実現できないことです。最新のITと金融工学の力を使って、より多くの人に資産を守る手立てを提供したのが、THEOの画期的なところです。

THEOという名称は、天才画家・ゴッホの弟、テオドルス・ファン・ゴッホの名前からとりました。ゴッホは激しい気性の持ち主で、友人も決して多くありませんでした。そんな彼の画の才能を認め、風変わりな気質を理解しようと努力し、資金を援助し続けたのが、弟のテオでした。テオがいたからこそ、ゴッホは生命を燃やして画を描き続けることができたし、その作品が後世に残り、いまも私たちに美の感動を与えてくれます。

われわれは、現代のテオとなり、ゴッホのようにできるだけ多くの人がその人の個性を思いっきり表現することをサポートしたい。そう願っています。

未来のリーダーは
マイノリティから生まれる

お金のデザインが掲げる言葉の1つに、「Future is not in front of us, it is inside of us.」があります。
「未来は私たちがまだ見ぬ先にあるのではなく、私たちの内なるところにある。」
とてもいい言葉だと思いませんか。これは、私の価値観に大きな影響を与えた畏友、ボリス・ディートリッヒから拝借した言葉です。

ボリスはオランダ人で、LGBT(L=レズビアン、G=ゲイ、B=バイセクシュアル、T=トランスジェンダーなどのマイノリティ)の活動家です。ヒューマン・ライツ・ウォッチという、私が日本でチェアマンを務める国際人権団体の仕事で来日していた彼と出会い、その生き方に魅了されました。少し、彼の話を聞いてもらえますか。

大学生のころ、ボリスは自身がゲイかもしれないと思いながらも、直視せずに女の子と付き合っていたそうです。アメリカに留学中、その彼女と旅行に行った西海岸で、たまたまゲイのカップルと親しくなって、集会に連れていかれる。そこにいたゲイのリーダーが、突然、ボリスを指して「君もゲイだろう」と言ったというのです。彼はびっくりしてその場を立ち去るのですが、考えた結果やっぱりそうなんだろうと思い、親にカミングアウトしようとするんですね。

ちょうどそのころ、親から一通の手紙が届きます。なんとそこには、「姉がレズビアンであることを告白した。本当に悲しい出来事だが、私たちにはまだボリスという素晴らしい息子がいて、ディートリッヒ家を繁栄させてくれるだろう」と書いてあったのです。ボリスは親の悲しみを想い、カミングアウトをやめて勉学に励み、オランダに帰って国際弁護士として活躍します。このままいけば、社会的規範を抜け出すことなく人生を歩んでいったことでしょう。

しかし、彼の人生にもう一度転機が訪れます。あるとき、テレビでゲイのリーダーが暗殺されたとのニュースが流れました。その映像を見てボリスは衝撃を受けます。殺されたのは、ハーヴェイ・ミルク。サンフランシスコ市議会議員であり、ゲイを公表して初めて公職者となった、LGBT活動の伝説的リーダーです。そのミルクこそ、かつてボリスを集会で名指しし、ゲイだと言い当てた人物だったのです。

彼はもう迷いませんでした。「自分はミルクが果たせなかったことを実現するために生まれてきたのではないか」。そう考えたボリスは、両親にも、周囲の人間にもゲイであることを公表し、新しい人生を歩み出します。そのとき、悲しみ嘆く親を見て「親からこれだけ弱みだと思われていることを、自分は強みに変えてみせる」と誓ったと言います。

その後は社会派弁護士に転身し、ゲイとして初めての最高裁判事に就任。さらに、ゲイとして初めて国会議員に当選し、連立与党の党首として世界で初めて同性愛者の結婚を認める法律を議会で通します。首相にもなれるのではないかという周囲の期待をよそに、法律を通した後はあっさり議員を辞め、いまはヒューマン・ライツ・ウォッチのディレクターとして、アメリカの諸州やヨーロッパ諸国を含め世界中で同性婚を認めるムーブメントを作りました。現在は、LGBTの人々の権利を守るためにロシアやアフリカを飛び回っています。

彼はなぜ、次々と社会にインパクトを与える偉業を成し遂げることができるのでしょうか。それは、家族のために抑圧してきた個性を肯定し、自分自身の人生を生き抜く「勇気」を得たからではないでしょうか。ミルクの死を機に、彼は不安を希望に、恐れを勇気に変えた。そうやって解放された個性はすごいパワーを放ち、ボリスを「本物のリーダー」に変えたのです。

これからの世界を率いるリーダーは、マイノリティの中から出てくると思います。マイノリティの人々は個性を発揮するハードルが高い分、乗り越えたときにめちゃくちゃ自分を表現できる。傷つけられた痛みを知っているから、深い心があって優しく、強い。

現代社会はいきすぎた資本主義、西欧的価値観の揺り戻しを強く受けています。力による支配、競争による勝ち負け、こういったことに人々は疲れ切っています。だからこそ、多様性を受け止め、人の痛みがわかるリーダーがこれからは活躍すると思います。

私は投資家として、一貫して物事の成長に可能性をかけて、リターンを得てきました。ソロモン・ブラザーズ時代は「お金をもうけるヤツが偉い」業界だったので、私ももうけることしか頭になかった。でもいま、さまざまな事業を通して実感しているのは、人の成長にかけるのが一番いいということです。

私が日本人の中で期待しているのは、堀江貴文さんや家入一真さん、猪子寿之さんらのような、社会的には色眼鏡で見られても、「やりたいこと」「言いたいこと」を率先する人たち。みんな自分の感性に正直で、すがすがしい。これくらい振り切っている人たちのほうが、未来のリーダーとして期待が持てます。

自分を偽らず、目標に向かって120%の個性を発揮できる人だけが、周囲を巻き込み、社会を変革する力を持つ。そんな人生に挑戦する人々を、私は投資の力を使って応援したい。THEOというサービスには、これまで考えてきた「哲学」がつまっているのです。

☆前編はコチラ

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    谷家 衛(たにや まもる)

    お金のデザイン ファウンダー
    東京大学法学部卒業後、ソロモン・ブラザーズに入社し、アジア最年少でマネジングディレクターに就任し、アジアの投資責任者となる。1999年、独立系最大手の一つのあすかアセットを創業。ライフネット生命保険やスタジオヨギーを立ち上げた後、ISAKを構想し、発起人代表を務める。2013年にお金のデザインを開設し、2016年からロボアドバイザー型資産運用システム「THEO(テオ)」のサービスを開始。

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