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2017/01/16

個性を120%発揮する人間こそが 世界を変えるリーダーになる(前編) ~伝説の投資家・谷家衛インタビュー

米ソロモン・ブラザーズでアジアの投資の責任者としてアジア最年少のマネージングディレクターとなった大物投資家であり、起業家。ライフネット生命など名だたる事業の仕掛人という経歴を聞くと、「野心的な成功者」というイメージをつい持ってしまう。しかし、谷家衛氏のインタビューは意外な問い掛けから始まった。「幸せとは何か――?」彼がいま、新会社「お金のデザイン」でやろうとしていることは、何なのか。谷家氏の哲学に裏打ちされた話に耳を傾けよう。



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谷家 衛氏
お金のデザイン ファウンダー

幸福度をはかる
3つのキーワード

みなさんは、「幸せとは何か」を考えたことがありますか?

私はソロモン・ブラザーズのトレーダーとして働き、独立して資産運用会社を立ち上げた後は、社会の成長につながる分野への投資を積極的に行ってきました。日本初のオンライン生保である、ライフネット生命の創業支援もそうです。
そして約10年前、アジア全域から人を集め、スティーブ・ジョブズのようなリーダーを育成する学校を日本に作ろうと考えました。

社会の成長を促すために、教育はなくてはならないもの。いわば本丸に手を出すのですから、生半可なことではできません。教育の最終目標を突き詰めると、「子どもたちが幸せになること」。だとしたら、「幸せ」の具体的な姿をイメージできていないと、いい学校は作れない。そう思って初めて幸せについて真剣に考えた結果、人間の幸せには「3つのキーワード」があると思うようになりました。

1つは、「絆」。家族や友人、会社組織、地域社会など何でもいい。ダライラマみたいに宇宙につながっている人はすごく幸せですよね。自分が何かとつながっている実感がないと、ほかの条件がいくら恵まれていても、人は幸せになれません。サッカーや野球や音楽だって、実際の場所に行ってみんなで応援したり聴いたりする方がより楽しいし、どんな成功者でも晩年一人だととても淋しそうですよね。当たり前すぎて忘れがちですが、「1人じゃない」という感覚は、幸せの大前提です。

もう1つは、「成長」。アイドルやスポーツ選手が典型ですが、若いころにピークを迎える職業だと、新しく登る山を見つけられないとピークを過ぎた後の長い人生で苦労する傾向があります。逆に鮨職人とか、80歳になっても自分なりの技を追求して現役でいられる人は、人生を通して幸福度が高いように見える。違いは何かと考えると、何歳になっても「成長を実感できるか」どうかなんですね。

そして最後に、「社会の価値観に縛られない自分を表現すること」。学生時代にものすごくユニークでとがっていた人が大企業に就職して、しばらくたって再会すると昔の個性を失って割と普通のいいヤツになっていたりする。無意識のうちに、社会的な優劣やルールの“オリ”に自分を閉じ込めてしまい、本来好きだと思うこと、面白いと思うことがわからなくなってしまうんですね。そういうオリ――会社とか肩書きとか常識といった社会上の価値観に関係なく、自分自身の内から少しずつわき上がる個性を重ねていくこと。それができる人が、幸せな人生を送れるのではないでしょうか。

成功者は120%
自分の個性を出し切る

投資家としてさまざまな案件にかかわってわかったのは、成功に必要なのは「何をやるか」より、「誰がやるか」。マクロの視点でみて成長分野の事業であることはもちろん重要ですが、あとは細かい事業計画よりもリーダーの資質で決まります。

私の学校設立の構想は、2014年に日本初の全寮制インターナショナルスクール「ISAK(アイザック)」開校という形で実現します。この事業は、小林りんさんというリーダーに出逢えたことが本当に幸運でした。

彼女は途上国支援に強い思い入れを持ち、高校生のころカナダのインターナショナルスクールに留学し、東大で開発経済、社会人になってからスタンフォード大の大学院で国際教育政策を学びました。実務経験ではモルガン・スタンレーでの不動産投資業や、国連児童基金(ユニセフ)でフィリピンのストリートチルドレンをサポートするプログラムに参加するなど、ハングリーで知識も経験も豊富で、海から海を渡り歩く海賊のようなパワーに満ちた人です。

「アジアの社会起業家を応援するファンドを作りたい」と相談に来た彼女に、学校設立の話を持ち掛けたときは面食らったようですが、「私は長年投資の世界にいて、あなたのように起業家精神あふれる人は世界の宝だと思っている。途上国にもそういう才能を持つ子どもはたくさんいて彼らも世界の宝。そういう子どもたちを呼び集めて一緒に勉強すれば、日本の子どもたちも刺激を受けて、きっとすごいリーダーが出てくる。そういう学校を作りましょう」と説得しました。

小林さんは理念を聞いてとても共感してくれたようで、学校の代表を引き受けてくれました。そうと決まれば、仲間集めから不動産探し、教員のリクルートに至るまで、自分が持つ知識、経験、人脈の120%をアイザックにつぎ込んで次々と実行していく。間近で見ていて、「リーダーシップとはこういうことか」と舌を巻きました。彼女自身、「アイザックを作るために生まれて来た」と言っているくらい、やりがいを感じているようです。

スティーブ・ジョブズの有名なスタンフォード大学でのスピーチに、「コネクティング・ザ・ドッツ」というエピソードが出てきます。彼が若い頃に興味を持ち、学んだカリグラフィ―(西洋の美しい書体)の手法が、10年後にマッキントッシュを設計するときに思いがけず役立ったという話です。ジョブズはコンピューターに初めて美しい複数の書体を組み込み、マックを大ヒットさせました。

 

この話は、「過去に学んだことは自然とつながっていく」という教訓だとずっと思っていました。その後、小林さんやいろいろな起業家を見ていて強く思ったことがあります。複数の書体がなくても、おそらくマックはヒットしたでしょう。大事なのは、ジョブズが人生で学んだことすべてをマックの開発に注ぎ込んだことです。100%の限界を超え、自分の個性を120%出し切ったからこそ、人々に感動を与える画期的なコンピューターが生まれた。

小林さんの場合は、彼女の不動産投資の経験から新しい素晴らしい校舎を建て、ユニセフやスタンフォード時代の人脈から素晴らしい先生、子どもたち、チームメンバーを集めて来て、ついには母校のUWC(United World College)グループへの加盟を進めています。もし例えば、モダンアートをやっていた人であれば廃校をモダンアートで飾ってクリエイティブな校舎から始めるなどということもあり得たと思うんですよね。120%自分自身を表現しているから自分が過去やったことを全部注ぎ込んでしまう。それこそが「コネクティング・ザ・ドッツ」の本当の意味だと思うようになりました。

真のリーダーとは、自分自身を120%表現する人――。そのことに、私は小林さんを見て気が付きました。ジョブズにも同じことが言えますし、これまで私が活動を共にしてきたライフネット生命の出口治明さんや岩瀬大輔さんもそうです。自分を偽らず、成長を感じながら120%で生きる人は、幸せです。そんな人をもっと増やしたいし、応援したい。学校設立によって、私の想いはますます強くなりました。

*続きの後編はコチラから読めます!

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    谷家 衛(たにや まもる)

    お金のデザイン ファウンダー
    東京大学法学部卒業後、ソロモン・ブラザーズに入社し、アジア最年少でマネジングディレクターに就任し、アジアの投資責任者となる。1999年、独立系最大手の一つのあすかアセットを創業。ライフネット生命保険やスタジオヨギーを立ち上げた後、ISAKを構想し、発起人代表を務める。2013年にお金のデザインを開設し、2016年からロボアドバイザー型資産運用システム「THEO(テオ)」のサービスを開始。

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