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2017/01/16

「7割のエントリーシートはほとんど読まれずに捨てられます!」-雇用のカリスマが語った人事のホンネと“就活”のホント(前編)-

大企業の多くは送られてきたエントリーシートをほとんど読まずに捨てる!?就活生からすれば思わず疑いたくなることを、『エンゼルバンク』海老沢康生のモデルであり、「雇用のカリスマ」と呼ばれる海老原嗣生氏は話す。なぜ、企業はエントリーシートを捨てるのか、明治大学にて行われた「就活のススメ講座」で海老原氏が語った、就活生にとって“不都合な真実”を学生からのQ&Aにお答えする形で、前後編にわたってお伝えする。

後編はコチラ

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Q.企業ってどういう人を採りたいと思っているんですか?やっぱり「デキる」人なんですか?

大学入試のように偏差値があって、できる人から順に企業に決まっていく、っていうのは違うかな。会社によって、採るタイプが全然違うってこと、気づいて欲しいです。例えば、銀行系だったら、中入ってすごく勉強しなきゃならない。35歳になったらプロジェクトファイナンスとかすごい仕事やってる人もいるけど、23歳でそんな仕事できるわけない。だとしたら、基礎勉強したあと、年齢に応じて経験積んでいかなきゃならない。最初は住宅ローンの営業なんかから入って金融の仕組みを覚えながら、証券外務員とか簿記とかAFPとか果てはテーラー(窓口)なんかまで10個くらい、資格取ってさ。そのあと小規模法人で与信やBSの見方が少しずつわかり、社長としゃべるのが上手くなってくると、今度は少し長い手形を落とせるようになる。そうしたら中堅法人相手に移って、協調融資やCPなんかも覚える。そして大企業の営業に行くようになると、今度は株とか社債とか覚えて、っていうのを10年ぐらいかかって身につけて、やっと大きい仕事できるわけ。つまり若い間にトップ取って、それで課長になる、役員になるなんて世界観は絶対銀行にはないんです。

対照的なのが人材ビジネスですね。人材ビジネスだとどの企業でも、28歳だともう課長やってる人達がいて、ダメな人は全然ダメです。大きな差がついてる。すごい人だと31、2歳で役員までいっちゃうんですよ。逆にいうと、覚えることも、積み重ねる経験も、そんなにないんです。だから売れる人は新人の時からロケットスタートして、2年目にはMVPとっちゃう。。長く1つの道で修練を続けるよりさっさと結果出したいという人は人材ビジネスに入った方がいいと思います。

だから、人材ビジネス向きなタイプの人がが銀行に入ったら通しないし、その逆も通用しないです。こんな感じで、企業によって採るタイプは違うんです。銀行と商社とメーカーと人材ビジネス4つ全部受かったという人は極めて少ないですよ。商社受かった人が銀行落ちる、銀行受かった人が商社落ちる、みたいな感じで、採る人って違うんです。

皆さんに言いたいのは、100点満点のような、こうやったらどこでも受かるだろうという履歴書を作って、こうやったらどこでも受かるだろうという最高の面接パターンを作ってしゃべっても、絶対上手くいかないんですよ。企業が欲しいか、欲しくないか思うのは別の問題だから。そこを肝に置いておいて欲しいですね。

Q.面接ではやっぱり奇抜なエピソードが必要になるの?

そんなことありません。内容自体は普通のものでまったく問題ないです。でも、多くの人がそれを勘違いしているようですね。

皆さん、就職活動で自己アピールしようと思うと何を言いますか。NPOで頑張ったとか、留学で頑張った、何とかの委員をやっていたとか、そういうことを言おうと思っている人いませんか。それ聞くの、僕らはもうヘトヘトなんです。少しちょっと変わったことやろうという人達は、大冒険してきました、みたいな話するんですよね。日本一周自転車でしてきましたとか。それから1000人の人から握手もらいましたとか。でもそれ、人事側はもう勘弁して欲しいと思ってるんです。そんなこと言われても、なんでその人をうちらが採らなきゃいけないのと、どこの企業もそう考えているんです。すごく強いサークルの委員長をやったとかならわかりますけど、よくわからないサークルの、副会計やってましたとか、そんな話をしてくるんですよ。なんでうちがその人を採らなきゃいけないの。なんでそれ話したら採ってもらえるのって考えて欲しいんです。たぶん、企業というのは、そういう見栄えのいいことを言うと喜ぶだから入れる、とか考えてるのかな、学生は。もしくは面接官を驚かしたり感動させたりすると入れる、こう考えているんだと思ってるんでしょう。でもそれは全くの間違いです。そんな話は、その人が仕事を上手くできる人かどうか分かるわけないじゃないですか。

なんで企業は面接やってるかということ、よく考えて欲しいんです。うちの仕事をちゃんとやってもらえるのかな、ってところを見ているんです。仕事というのは会社によって全然違うんです。結果、採る人も異なってきます。だから優等生的な発言なんかどうでもよくて、うちに向いているのか向いてないのかが知りたいんです。

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「うちに向いている」と判断されなければ企業に採ってもらえません。そして、そう判断される要因は、仕事がちゃんとできる人かどうかという部分以外に、もう1つあります。うちの社内にいる人間と上手くやっていけるか、というところです。入社したのに他のメンバーと喧嘩ばかりしていたら困りますから。新人1人採れば、3億円ぐらいのお金を定年までに支払うわけです。3億円も払うのに、中入って喧嘩ばっかり、中入って仕事ができないという人、来られても困るでしょ。だから上手く仕事ができる人か、みんなと上手くやっていける人かというところを見ているんです。

つまり、君はうちで上手くやっていけるの、うちの仕事ができるの、仲間とやっていけるの、俺達それが大切で知りたいから面接やってるんだよ、本音で話してねって言っているのに、皆さんは格好いいこと言えばいいんだって思って、どんどん「ウソ」と「誇張」の洋服を着る。でも僕らはあなたの裸が見たいんだよ。だから洋服を剥がすために、それ嘘でしょ、いつそんなことあったの、そんな格好いいことばっかりいつもあるわけじゃないでしょ、って言って質問をする。でもそれに負けじとみなさんはまた着込む。脱がす、着る、脱がす、着るのこの掛け合わせになっちゃうわけなんです。

それならば最初から皆さん、自分をしっかり表せるネタ、つまり自分らしさが最も出る話を話せるようになっておくといいですね。あなたらしさ、なんだから、他者と区別できないような「誰でもいう」ことはやめてほしいところ。誰を採ったらいいかわからなくなるもん。

こうしうと、自分らしさって……て困るでしょ?そんな時はいい方法があります。案外、自分の欠点に一番「あなたらしさ」が出るもんなんです。一つには欠点ってそれが逆に出ると長所になったりする。たとえば、気弱で心配しいって人は、その分、準備万端だったり、さ。そうやって欠点から長所を導き出せます。もう一つは、欠点っていやだから、それにどう対処しようか、無意識に人って素がでるものです。その克服の仕方にあなたらしさが出る。それをエピソードとして話す。

Q.どういうエントリーシートが読まれるんですか?

たとえば某大手自動車メーカーさん。あそこはエントリーシートを全部見てくれます。1通も残さず見てくれる奇特な会社です。だけど見るポイントがあります。学歴もあまり関係なくて、エントリーシートの中に、これが入ってた学生は絶対通せっていうふうになっています。これとは何か。その会社で一番必要で、その会社の真髄と言われていることは何か。それはズバリ“PDCAサイクル”なんです。

エントリーシートって、なんでみんな捨てられるかわかりますか? 1万枚も来て読めないからです。ところがその会社はなぜ読めるのでしょう。それは、管理職の人でみんなで分担して読むからです。その会社、管理職は2000人~3000人いるから、1人当たり3枚ぐらい土日に読んできなさい、でOKなんです。

でも3000人が3枚ずつ読んだら、評価のポイントがバラバラになっちゃいます。そこで、ここがその会社のすごいところなんですが、評価ポイントがバラバラにならないように、通すポイントを1つ用意してるんです。そのポイントとは、PDCAサイクルが回せるかどうかっていうところ。カイゼンで有名な会社で、取引先にさえカイゼンを強いるほどの会社です。ちゃんと改善ができるか。改善っていうのは、つまりPDCAサイクルのことです。PLAN→DO→CHECK→ACTION、何かやる時には必ず計画を立てているか、計画を立てたら計画通りに実行しているか、実行し終わった後にこれをチェックするか、チェックした後にそれを改善するか、これらのサイクルが入ってる人は、とりあえず面接まで呼びなさいとなってるんですよ。

PDCAサイクルにどんなことを書いてあるのか。皆さん、たいてい大層なことを書くんですよ。でも薄っぺらくて嘘だらけだから、信用されないんです。1次面接通った人達がどんな話してるかっていうと、例えば、盆栽の水やりを延々と書いている。面白くもないのに延々と書いているんです。盆栽というのは切ったりすると弱るんだそうです。だからいかに切らないかという賭け、チャレンジを彼はずっとし続けてきたというんですよ。どういうチャレンジかというと、まず日の当て方。日の当てる時間とその角度。それから水のあげる時間、水のあげる回数。これの組み合わせ。これを組み合わせすると、簡単なんだけど1万通りぐらいになるんです。これを彼は傾向値出しながら全部やっていって、最後には一切剪定せずに育てた松の写真こうやって見せてきたんだそうです。

面白いから受かったんじゃ、僕はないと思うんです。こいつはうちに向いてる。PDCAサイクルをここまで回して、こういうことができるんだ。これはうちに入っても、仕事を与えたら絶対伸びるだろうと思って採ってると思います。

あなた達は、あなたらしいエピソードを用意してください。そしてあなたらしい“ハダカ”を見せてくれたら、落ちる企業と採ってくれる企業の2つに分かれます。落ちる企業は、落ちてバンザイじゃないですか。だって、そんな合ってもいない会社に入っても意味ないですよ。たとえば無理して電通入っても意味ないから。普段地味で暗いのに、無理して電通入って面白いことやり続けるというの、やっていると死んでしまいますよ。私がリコーを嘘偽りで入ったけども、1年で辞めてしまった理由もそれだと思っております。 だから、たとえ行きたいところに落ちたとしても気にしないこと。単に合ってなかったんだと思うだけにしときなさい。よろしいですか。(後編につづく)

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  • ☆海老原さんプロフィール写真

    海老原 嗣生 (えびはら つぐお)

    1964年生まれ
    コンサルタント、編集者。株式会社ニッチモ代表取締役。株式会社リクルートエージェント ソーシャルエグゼクティブ、株式会社リクルートワークス研究所 特別編集委員。
    上智大学経済学部を卒業。 リコーを経て、リクルートエイブリックに入社。新規事業や人事制度設計に携わるほか、系列のリクルート ワークス研究所で『 Works 』 の編集長にも就任した。 2008年に、HRコンサルティング会社、ニッチモを立ち上げ、 代表取締役に就任すると同時に、リクルートエージェントの第1号フェロー社員となり、人事経営雑誌「 HRmics 」の編集長になる。 「雇用のカリスマ」と呼ばれ、漫画『エンゼルバンク』の作中人物“カリスマ転職代理人、海老沢康生”のモデルでもある。

 

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