ラクしたい心こそがイノベーションを生む
三田 ああ、僕も別の雑誌で連載中なのに「ウチの雑誌でも連載しませんか」とオファーをいただくことがあって。 そういう時は「ここで断ったら二度とチャンスはないな」 ってわかるんです。 そういう時はまず「やります」って答えてから、「やれる方法」を考えるんですよ。
出口 それは絶対、正しい。その時こそ、今の自分から仕事の幅を広げるチャンスですから!
三田 とりあえず「やる」と決めたら、方法を考えなきゃならない。 アシスタントを倍に増やしてみようかなとか、 作業をデジタルに移行しようかなとか。 で結局、なんとかなります(笑)。
出口 三田さんの考えは、イノベーションの基本だと思いますよ。
三田 どういうことですか?
出口 イノベーションって、最初に枠や足かせを作って、 そこから考えることで生まれるのです。 たとえば、午後4時に5時間かかる仕事を上司から言い渡されたとします。 真面目な人はそこで今から取りかかれば9時には終わるな、と考える。 でも不真面目な人はその日の7時からデートの約束をしてたりするわけです(笑)。
三田 なるほど(笑)。 5時間かかる仕事を3時間に短縮して、デートに間に合うにはどうすれば良いか必死に考えれば…
出口 イノベーションが生まれるんです! 三田さんの「並行して連載やります」というのは7時のデートを設定したのと同じ。 そこからどうやるかと考えるのは、人間の歴史と照らしても素晴らしい方法ですよ。
三田 いや、そんなに大きな話だと思ってませんでした(笑)。 でも確かに僕はアウトプットを増やしつつ、 自分が抱える仕事量をいかに減らすかということを常に考えています。
出口 そこですよ。イノベーションは、ラクしたい心からすべて生まれてるんです(笑)。※8
三田 では、まずはそのラクする心を持つことから始めればいいですね。
出口 それこそ自分の会社人生を変える「王道」だし、「 近道」じゃないかと僕は思いますよ。
明治時代、多くの人々が職を求めて南米や西海岸に渡りました。私はその人たちを尊敬しています。今の日本は国際的に見て平均以上の生活ができるし、ポテンシャルもあるのにグチを言う人が多くて、そこまで真剣に生きていない。食い詰めて海外に出て行った先人たちのように、ガッツを持って挑戦していく人をこの筑豊から輩出したい。そういった環境を作り、チャンスを生み出していくことに、経営者としての義務とやりがいを感じています。
三田 なるほど(笑)。 5時間かかる仕事を3時間に短縮して、デートに間に合うにはどうすれば良いか必死に考えれば…
出口 イノベーションが生まれるんです! 三田さんの「並行して連載やります」というのは7時のデートを設定したのと同じ。 そこからどうやるかと考えるのは、人間の歴史と照らしても素晴らしい方法ですよ。
三田 いや、そんなに大きな話だと思ってませんでした(笑)。 でも確かに僕はアウトプットを増やしつつ、 自分が抱える仕事量をいかに減らすかということを常に考えています。
出口 そこですよ。イノベーションは、ラクしたい心からすべて生まれてるんです(笑)。※8
三田 では、まずはそのラクする心を持つことから始めればいいですね。
出口 それこそ自分の会社人生を変える「王道」だし、「 近道」じゃないかと僕は思いますよ。
※8 「“ラクして儲けたい”という気持ちが人間を進化させて産業革命を生んだ。それは間違いないと思う」(出口氏)
金言!三箇条
一 自分の直感を信じるべし
フィーリングとは無意識の自分なのだ。それを信じよう。
二 流れに身を任せるべし
流されるというと聞こえは悪いが、流れに乗れば人生は変わる。
三 ラクになるために頭を働かせるべし
ラクするためには効率があがる。ラクしたい心は悪ではなく、善。
対談後記
・終始なごやかな雰囲気の出口氏は60代後半には見えない若々しさ。
・歴史にすごく詳しくてその歴史から真摯に学ぼうという姿勢に感銘!
・談話室の書棚には『インベスターZ』が全巻。「社員全員、読んでます」が嬉しかった。
・先方が出してくれた茶菓子のきんつばを一人もりもり食べる担当の女性編集。(ちなみに同郷)
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でぐち・はるあき
1948年、三重県生まれ。京都大学法学部を卒業後、72年に日本生命保険相互会社に入社。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て同社を退職。2008年ライフネット生命保険株式会社を開業。12年東証マザーズ上場。13年6月から現職。
・イラスト/三田紀房 ・取材・構成/崎谷美穂 ・写真/林 紘輝(小学館) ・デザイン/井上則人デザイン事務所
出典 週刊ビッグコミックスピリッツ Np.33 より