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三田紀房×藤野英人対談(後編)

中学生が投資する学園漫画『インベスターZ』を連載中の三田紀房さんと、「ひふみ投信」を運用するレオス・キャピタルワークスの藤野英人さん。「日本人はお金が大好きなのに、本心を隠している!」というのが2人の共通認識だ。私たちを取り巻くお金と経済について、目からウロコの対談をお送りする。
→前編「天下統一だってカネのおかげだ!」はこちらから

藤野英人(写真左)投資家。ファンドマネージャー。1966年生まれ。早稲田大学卒業後、野村證券、JPモルガン、ゴールドマン・サックス系の資産運用会社を経て、2003年にレオス・キャピタルワークスを創業。成長する日本株に投資する「ひふみ投信」を運用し、高パフォーマンスを上げ続けている。次世代への投資のため、明治大学商学部の講師も長年務める。ツイッター :@fu4

日本には2匹のタヌキがいる?!

三田:投資についてのマンガを連載していて思うんですけど、日本人ってお金の話に対してアレルギーがありますよね。真正面から向き合わず、避けているというか。

藤野:じゃあ嫌いかというと、そうじゃない。実際、日本人ってお金が大好きなんですよ。

三田:藤野さんは著書でその話を書かれていますよね。「日本人はお金が大好き」って、読んだときに「なるほど!」と思いました。なぜそう思うのか、詳しく教えてください。

藤野:まず貯金が好きでしょう。個人金融資産1,600兆円のうち、現預金が890兆円もある国なんて他に類を見ません。あと会社の内部留保だって、300兆円以上ある。

よく「日本には2匹のタヌキがいる」って言うんです。1匹は穴倉にお金を貯め込む個人で、もう1匹は株主にも従業員にも投資にもお金を回さずに抱え込む会社。2匹で1,190兆円ものお金を持っている。これ、浅ましくないですか? というのが私の主張です。

三田:むしろ守銭奴に近い。

藤野:そうそう。消費も投資もしないでお金を貯め込んで、大好きなのに認めようとしない。欧米人をハゲタカとかお金で動くとか言うけど、自分たちこそそんなにお金を貯め込むのが美しい生き方といえるのか。貯金をするなとは言いませんが、お金の話をタブー視する人たちに対しては、もう少し自分の姿を正しく認識してもいいのにと思います。

三田:日本人のお金の使い方も変だなと思うことが多くて、民間がぜいたくなビルを建てたりして派手にお金を使うと叩かれるのに、政府や自治体のような官が使うことに対しては割と寛容ですよね。ムダな公共工事を山ほどしても、あまり叩かれない。

藤野:なんだかんだ言って、日本人は国や官に素直に従いますよね。ファンドは嫌われやすいですよ。個人のお金を集めて民間に投資をするというのは、官を一切通しませんから。

いったん資金を集めて再分配するというのは、本来は権力者がやることなんですね。でもファンドは個人投資家からお金を集めて同じことができる。ファンドは官とは違った形で、民間の活力ある世界を生み出す素晴らしい仕組みだと思うのですが、官にべったりの思考だと「けしからん」ってことになります。

三田:日本人の「お上意識」の強さをどう変えていくか。私が『インベスターZ』を描くときにはそれも意識していて、もっと民間が自分たちで自立していける社会になればいいなと思っています。将来のためにはいまの子供たちに期待するしかなくて、子供がもっと投資を知って関わって、社会を変えてほしいという願いも込めています。

藤野:私が好きな話の一つに「旗振り山」っていうのがあるんです。江戸時代、大阪の堂島は米取引の中心地でした。そこで決まる取引価格が江戸や各地で重要な情報になるわけですが、当時は電話もメールもない。じゃあどうやって伝播されたかというと、米飛脚と呼ばれた幕府の天下りの人たちが走って伝えたんですね。

しかし民間人の中には、米飛脚より早く価格を伝えて儲けようと思う人がいて、手旗信号の仕組みを作ったんです。山から山へ手旗信号で情報を伝えて、なんと堂島から和歌山まで10分で伝達したとか。彼らが使っていた望遠鏡が山の上から出土されることがあって、これは手旗信号の回数を減らすためのブロードバンドなわけです。

三田:へえ~。面白い。

藤野:しかし政府は手旗信号を禁止したり、軍隊を出して邪魔したりする。そうすると次は民間人が鳩を飛ばして対抗し、さらに政府がハヤブサを大量に放って殺しちゃったり……。だから今も昔もやっていることは変わりませんね。今でいうビットコインの問題も、貨幣の流通を管理したい国家と、介入されずに自分たちだけで運営したい民間企業がぶつかっている。まさに官と民との戦いです。

三田:いや、本当にそうですね。情報によって資金の流れが決まり、それをどう出し抜くかという競争が起きる。古今東西、そしてこれからもこの仕組みは変わらないでしょうね。

藤野:インターネットとかバイオテクノロジーとか、技術は変化しても基本的な仕組みは変わらない。それをマンガで描いている『インベスターZ』は、本当にすごいと思います。

三田:経済がどういう仕組みで動いているのかを、日本のビジネスマンはもっと知るべきだと思います。ときどき電車に乗って周囲を見回すと、スーツ着たおじさんたちがスマホでゲームしているんですよね。グローバル化で企業間競争が厳しくなるとか言っているけど、こんな風で勝てるのかなあと思ってしまいます。日本人が勤勉って、本当なのかなあと。

藤野:「お金が嫌い」とか「働くのが好き」とか、日本人のイメージって実は真逆だと思います。本当はお金を貯めるのが大好きだし、会社も労働も好きじゃない。もっとその自覚を持って、素直に「お金が好きだから、どう生かすかを研究しよう」「今は会社に行くのが嫌だけど、じゃあどうすれば仕事が好きになれるかを考えよう」という前向きな変化が起きればいいと思います。

そのためにも、『インベスターZ』のようなマンガが果たす役割って大きいと思うんです。これからもどんどん経済や投資の世界で面白いネタに斬り込んでいってください!

三田:ありがとうございます!

『インベスターZ』大推薦! お金・投資本の名著『投資家が「お金」よりも大切にしていること』

藤野英人さん著『投資家が「お金」よりも大切にしていること』(星海社新書)は、お金と経済の本質をわかりやすく解説したロングセラー。「カネ儲け=汚い」「投資は虚業」と思っている人は、考えが180度変わるかも。ここで特別に、対談を記念して本の「はじめに」と「第1章」を全文公開するので、ぜひ読んでみてください! あなたが「お金」よりも大切にしていることは、なんですか?

※「はじめに」はこちらから

この「第1章」で学べること

① 日本人は、お金が大好き

② 日本人は、アメリカ人の52分の1しか寄付しないケチな国民

③ 日本人は、アメリカ人をハゲタカと言うが、じつは日本人こそがハゲタカ

④ 日本人は、お金について何も考えてないだけ

⑤ 日本人は、不真面目なお金教の信者。お金のことしか信じていない

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 第1章 日本人は、お金が大好きで、ハゲタカで、不真面目 

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8割の学生が「お金儲け=悪」

よく言われることですが、日本人はお金に対してあまり良いイメージを持っていません。自分の年収や貯蓄額を公言する人は少ないですし、「お金について話すこと自体、憚られる」という人も多いのではないでしょうか。

お金の話になるとなぜか小声になる人も、たまに見かけます。

そして、「投資」や「お金儲け」ともなると、「汚い・不潔」「怖い」「腹黒い・ブラック・暗い」「ズルい・他人を蹴落とす」「悪い」「賭け事・ギャンブル」「がめつい」……といった、ネガティブなイメージを持っている人がほとんどです。言葉には出さなくても、心の底ではそう思っています。

明治大学の授業では商学部の学生が大半を占めているのですが、最初の授業でアンケートをとってみると、8割の学生が「投資=ダーティー」「お金儲け=悪」だと思っている、という残念な結果が出ました。

商学部の学生でそのような結果なのですから、文学部や法学部の学生になると、もっと悪いイメージを持っている率が高くなるに違いありません。

「起業したい!」「ベンチャー企業に入りたい!」と宣言する学生も、「金儲けしたい!」とはけっして口にせず、「社会貢献できて、社員がつつましく暮らせれば、それでいい」などと言います。みんな、「お金を稼ぐ」ということに対して、あまり良いイメージは持っていないのです。

また、私がCIO(最高運用責任者)を務める会社(レオス・キャピタルワークス)では、証券会社や銀行を通じないで直接販売する「ひふみ投信」という金融商品(投資信託)を扱っていますが、お客さんの反応からも、投資についての悪いイメージを直に感じることが多いのが現実です。 

特に、地方に行くほど、お金の話をするだけで顔をしかめられたり、うしろ指をさされたりします。投資の話をすると、年輩の方から「汗水たらして真面目に働かないとダメでしょ」と、お叱りを受けることすらあります。

総じて、老若男女を問わず、お金に対して良いイメージは持っていないのです。
 しかし、良いイメージを持っていないからといって、彼ら・彼女らはお金が嫌いなわけではありません。

逆に、日本人はお金が大好きな民族です。
 お金に対する汚いイメージは、お金が大好きであることの裏返しとも言えます。小声でお金の話をする人ほど、じつはお金が好きで好きでたまらないのです。

なぜ、そんなことが断言できるのか? まずは、つぎの図を見てください。

※2008年末/「投資十番」より引用

お金大好き日本人。その実態って?

これは、日本とアメリカ、イギリス、ドイツ、フランスにおける個人金融資産の比率を表したものです。

これを見ると、日本の現金・預金の比率が突出して高いことがわかります。
 日本が55・5%と、半分以上を占めているのに対して、アメリカは15・3%、イギリスは32・2%、ドイツは39・4%、フランスは31・3%になっています。

何が言いたいかというと、日本は「現金と預金」の比率が高くて、他の国は有価証券や株式といった「投資」の比率が高いということです。

一見すると、イギリスの有価証券や株式の比率は日本と変わらないか、日本よりも低いように見えますが、保険・年金のなかに投資性の強いものが多く含まれています。海外の保険は、いわゆる日本の生命保険のような貯蓄的な商品というよりも、投資的な商品に近いのです。

ですから、数字のうえではイギリスの有価証券と株式の比率が低くなっていますが、実際に社会に投資されている金融資産の総比率では、日本よりも高いのです。
 それは、ドイツやフランスにおいても同じことです。

この統計からわかることは、ずばり、日本人はお金が大好きだということです。現金と預金が大好き、と言ったほうがより正確かもしれません。

お金が好きといっても、お金を使うのが好きというわけではありません。何かを消費するわけでも、株式などに投資するわけでもなく、現金や預金として、お金を自分の懐に貯め込むのが好きなのですから、「お金そのもの」が大好きなのです。

日本の個人金融資産は総額1400兆円だと言われていますが、そのうちの半分強、800兆円もの莫大なお金が、現金と預金なんですね。
 貯蓄型の生命保険も含めると、それ以上のお金が、まったく使用されずに眠っていることになります。

日本人は世界一ケチな民族

日本人はお金に対してケチでもあります。
 その証拠に、つぎの問題の答えはいくらになるか、ちょっと考えてみてください。

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問題

アメリカでは、年間で、成人1人あたり約13万円のお金を寄附しています。
 それに対して日本では、成人1人あたり、いくらのお金を寄附しているでしょうか?

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 講演でこの質問を会場に投げかけると、みなさんは私の意図を感じ取り、思っているよりも低く見積もって、1万円くらいだとお答えになりますが、大間違いです。

答えは、その4分の1の2500円。たったの2500円です! 
 アメリカの、じつに52分の1なんですね。 

つぎの図を見てください。

※2009.6.29
JST理科教育支援センター調べ

これは、日本とアメリカ、イギリスにおける年間の寄附額を比較したものです。この図を見れば、日本人はアメリカ人やイギリス人に比べて寄附をしない民族であることが、端的にわかります。

この図には、アメリカとイギリスのデータしか載っていませんが、日本は先進国のなかでもっとも寄附をしない国です。ほとんどの先進国では、家計の2〜3%くらいの金額を寄附します。アメリカは3%です。

ところが日本人は、家計のたった0・08%しか寄附しないのです。
 寄附主体における個人の比率を見ると、日本は36%です。残りの64%は企業や団体になります。一方、イギリスでは個人の比率が60%、アメリカでは76%も占め、いかに一般の人々が寄附を行っているかがわかります。

「アメリカでは、ビル・ゲイツみたいなお金持ちが莫大な寄附をして、平均額を底上げしている」と思われるかもしれませんが、それはよくある誤解です。

「ニューヨーク・タイムズ」の記事(2010年8月20日)によると、年収2万5000ドル(日本円にすると約230万円/2013年1月末現在)以下の人が年収の4・2%を寄附しているのに対して、年収7万5000ドル(約690万円)以上の人は年収の2・7%の寄附しかしていない、といいます。

けっして、お金持ちだけが寄附をしているわけではなく、お金にゆとりがない人でも寄附を行う文化があるんですね(低所得者が寄附をすれば税制的に有利というわけではないにもかかわらず、です)。

逆に、日本は寄附を行わない文化です。それを文化の違いだと単純に考えることもできますが、日本人はお金にがめついという事実は間違いないでしょう。

もし、個人金融資産の1%を東日本大震災の義援金として寄附していたら、約14兆円ものお金が集まったはずです。
 でも、実際に集まった義援金は、数千億円にとどまりました。

3・11が起きた2011年の成人1人あたりの寄附額は6551円と倍増しましたが、よくよく考えてみると、あれほどの大災害・悲劇に見舞われたのに、例年の2倍しか寄附しないのが、日本人の本性だと言えます。

2倍しか寄附しないというのは、阪神大震災のときもまったく同じでした。
 あえて断言しますが、日本人ほどケチな民族はいません。

困っている人のために寄附もしないし、社会にお金を回すための投資もしない。じゃあ、他の先進国の人たちに比べて、公共のためのお金である税金を多く払っているのかといえば、そんなこともない。日本の税率は、むしろ低いくらいです。

じゃあ、いったい何をしているのか? 
 日本人は自分のこと、すなわち、自分のお金のことしか考えていないのです。
 自分のお金を現金や預金として守ることしか考えていないのです。

大友克洋の漫画『アキラ』では、大量の缶詰を大切そうに抱えながらひとつも開けずに死んでいく婆のことが皮肉的に書かれていますが、その姿にそっくりです。

現金・預金を55%も抱えて、とにかくお金を1円も減らしたくない。もう絶対に減らしたくない。世の中の人に渡すなんて大損だと思っている。
 これを守銭奴と言わず、なんと言えばいいのでしょうか?

お金について「何も考えていない」

少し前の話になりますが、2007年に、スティール・パートナーズ・ジャパンというアメリカ系の投資ファンドが、老舗ソース会社であるブルドックソース株式会社の株を買い占めたことがありました。具体的には、TOBという株式公開買い付けによって、ブルドックソースの全株取得に乗り出したのです。

それに対して、ブルドックソース側は、スティール・パートナーズの持ち株比率が下がるような対応策を講じました。この対立は裁判にまで発展し、結局、ブルドックソース側が勝って、買収回避に成功。

そのとき、日本人はスティール・パートナーズの経営者に対して、ものすごく怒りました。メディアもそろって、スティール・パートナーズの経営者を批判しました。

「あいつらは金の亡者だ!」

「やつらは短期的に儲けることしか考えていない!」

といった感じに。
 それだけを聞くと、まっとうな意見のように思えます。ブルドックソースの社員のことを考えているようには思えないし、他の株主の利益を無視しているようにも思えるからです。

それよりも、日本からお金だけを吸い取っていくような感覚が強かったからかもしれません。日本人の誰もが、アメリカ系投資ファンドのことを「ハゲタカだ!」と言って、猛烈に批難したのです。

では、アメリカ人は瀕死の者にたかるハゲタカで、日本人は清くて真面目な小鳩なのでしょうか?
 私は、けっしてそうは思いません。

むしろ、日本人こそがハゲタカだと、常日頃感じています。

数年前、日本人はブラジルの株をものすごい勢いで購入しました。ちょっとしたブームだったんですね。

ところが逆にいま、ものすごい勢いで引き上げています。
 このような状況で、私はつぎのような質問をよく受けます。

「ブラジルはいまちょっとダメだから、中国でもいきましょうか? 最近は新興国が伸びているので、インドに乗り換えたほうがいいでしょうか? それとも他に良い国があるなら、ぜひ教えてください」

さて、このような考え方とさきほどのスティール・パートナーズとの間には、どのような違いがあるというのでしょうか?
 私には同じように思えてなりません。

「あっちがダメだから、つぎはこっちだ」「こっちのほうが利益が出そうだ」などと言って乗り換えるのはいいですが、ちょっと考えてみてください。私たちは、テレビや新聞で散々「ハゲタカだ!」と言ってスティール・パートナーズを非難したけれど、私たちこそがハゲタカではないのでしょうか?

ハゲタカが良いか悪いかは別にして、私たちもハゲタカだという認識を持つ必要があります。もし「私はハゲタカじゃない」と言うのであれば、ブラジルの株を長期間、持つべきです。

 最低でも5年、10年は持ってほしいと思います。
 もし売るのであれば、「私はハゲタカだ」と認めてください。
 そうでないとおかしいですよね。日本人にされたことに対しては頭にくるけれど、ブラジル人や中国人、インド人ならいいという論理は成り立ちません。

他の国の話になれば、株主の価値や従業員のことを考えなくてもいいのでしょうか?
 それは、人種差別ではないでしょうか?

 私が講演やセミナーでそのような話をすると、会場はシーンとなります。何も私はみなさんを批判したいわけではありません。みなさんが悪いわけでもありません。

なぜ、そのような考え方になってしまうのかを問いたいのです。
 その理由は、「何も考えていない」というひと言に尽きます。

たくさんお金を持っていても、下を向いて自分の懐を見つめているだけ。視線を上げて、そこからつながる流れや、その行きつく世界のことなど、まったく見ていない。だから、自分がお金を通じて社会に参加しているという意識、それに付随して責任が発生するという意識が乏しいのです。

つまり、自分のお金のことしか考えていないのでしょう。
 私が「お金とは何か?」ということについて考えてほしいと訴える理由は、そこにあります。

事実、ブラジル株ブームによって、8兆円近いお金がブラジルに投資されましたが、元本割れするということで解約が相次いだことで、ブラジルの通貨であるレアルが暴落してしまいました(口絵の2ページ目の背景は100ブラジルレアルです)。

それは結果的に、円高の大きな要因にもなっています。
 結局、日本人のブラジルへの投資は、ブラジル人のなんの役にも立たなかったばかりか、ブラジルの通貨や経済を混乱させてしまったんですね。

自分たちがその元凶のひとりであるということは、誰も認識していないし、指摘もしない。
 だから私は、あえてみなさんのことをハゲタカだと言うようにしているのです。

海外では、投資信託を20年から30年くらいのスパンで持つのが一般的です(最近、投資信託を始めた人が多いので、平均すると10年くらいに下がりますが)。

一方、日本では、投資信託の平均保有年数はたったの2・4年(2011年・投資信託協会調べ)。短期間で引き上げるのは、ブラジル株にかぎった話ではないのです。

日本人は3年も保有していません。新入社員には「石の上にも3年だ」とか言いながら、自分自身は3年も耐えることができないんですね。
 世界でもっとも「(投資の)回転率が高い」と言われています。

つまり、自分のお金が心配で心配で仕方ない。何か危険な匂いがただよえば、すぐに売ってしまいます。1円でもお金を減らしたくない。

それが、日本人の本音だと言えます。
 投資信託の平均保有年数を見るだけでも、日本人のお金に対する考え方を垣間見ることができます。
 お金が大好きだからこそ、自分のお金を守ることに執着するのでしょう。

日本人は不真面目なお金教の信者

一般的なイメージとして、日本人は真面目だと思われていますが、私の考えは違います。日本人は真面目ということの意味を履き違えているように思えてならないのです。

広辞苑で「真面目」を調べてみると、

「真剣な態度・顔つき。本気。まごころがこもっていること。誠実なこと」
 と書かれています。大辞林でも同じように調べてみると、

「本気であること。真剣であること。誠意のこもっていること。誠実であること」
 と、同じようなことが書かれています。

つまり、言われたことを言われた通りにやることや、ルール・規則を守ったり、常識をわきまえたりすることは、真面目の本来の意味ではないのです。

先生や親や上司に対して反対意見を言うことは、ひょっとしたら真面目なのかもしれません。それは、真剣な様であるかもしれないし、誠実であるかもしれないからです。

非常識な行動だとしても、たとえばそれが会社のビジョンに反していて、なおかつ、お客さんのためにならないと思って行われるのであれば、それは真の意味で「真面目」な行為なのです。

私は、真面目という言葉が真面目に使われていないように思います。

真面目であることが、単に就業規則を守ったり、時間通りに来ることだったり、会社でいえばコンプライアンスを表面上遵守することだったりと、どちらかと言うと形式論になっているように感じるのです。

さらに真面目の語源まで調べてみると、
「柳は緑、花は紅、真面目」
 という、中国宋代の詩人、蘇東坡の詩にいきつきます。

意訳すると、「柳には柳の色、花には花の色があり、それぞれがそれぞれの個性や役割を発揮している」という意味です。

真面目は「しんめんもく」と読み、ありのままでいること、本質的であることを表しているんですね。

真面目とは、本気であり、真剣であり、誠実であること。
 そして、「本質とは何か」ということを、しっかり考えること。

そのように捉えると、日本人のお金に対する態度や行動は、不真面目であるとしか言いようがないでしょう。
 何も考えていないわけですし、考えているとしても自分のことしか考えていないわけですから。それはけっして誠実ではないし、本質的なことでもありません。

自分でお金を貯め込んでいるということは、人にお金を出したくないということ。それは、人を信じていないことでもあります。

日本人ほど、他人を信じていない民族はないということに他なりません。他人にお金を預けたら、もう自分のところに返ってこないと思っているわけですね。

最近では会社も信じていませんし、政府も信じていません。ましてやNPOやNGOといった非営利組織や非政府組織も信じていない。特定の宗教を信じている人も少ないでしょう。

では、日本人はいったい何を信じているのでしょうか?
 結局、お金しかありません。

日本人はお金を信じているのだと、私は思います。
 だから、お金を現金や預金として貯め込んでいるのでしょう。他に信じられるものがないため、仕方なくお金を信じているとも言えます。

人を信じられず、お金しか信じられない。それが日本人の本当の姿なのです。ちょっと寂しい気がしますし、日本人として恥ずかしい気持ちにもなります。

「そんなことはない!」とお怒りになる方もいるかもしれませんが、残念ながらそれが現実です。「お金しか信じられない」という思想は、「現金・預金が大好きで、寄附はしない」という実際の行動の結果に、端的に表れているのです。

あなたには、「お金」よりも信じられるものがありますか?

あなたには、「お金」よりも大切なものがありますか?

その結論にいたるためにも、お金について「真面目に」考えていかなければいけないのです。
                                       (「第1章」了)

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