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本編で財前が圧倒された、生命保険のセールスレディ。巧みな営業トークで保険への加入を迫るが、実際私たちの生活に保険は必要なのだろうか。約15年にわたる保険営業の経験から、保険の商品や販売手法を疑問視する保険コンサルタントの後田亨さんに話を訊いた。
2時間話を訊いた編集者が衝撃を受けて、15年間入っていた生命保険を解約!前編では、「保険の還元率は比較対象によっては、ギャンブル以下」と驚きの内容が多かった。後編では後田さんが、消費者が保険加入時に陥りやすい間違い、落とし穴についてレクチャーする。

「本当に必要」な
保険の見極め方とは

 生命保険に否定的なことばかり申し上げてしまいましたが、まったく利用する価値がないわけではありません。保険はお金を用意する手段の一つ。国や勤めている会社の制度を利用しても対応できないほどの大金が絡むものには、保険をかけておいてもいいと思います。

 たとえば、自立していない子供がいる家庭で、働いているのが世帯主だけの場合、子供が独り立ちする前に世帯主が亡くなってしまったら、残された家族には生活費や教育費など大金が必要になります。一般に、子供が幼いうちにその後の生活に必要なお金をすべて貯蓄できているケースは少ないでしょう。遺族年金や勤務先からの弔慰金などで賄えない場合、死亡保険への加入を検討していいと思います。私には子供がいないので保険に加入していませんが、もし子供がいたら、20年くらい、掛け捨ての死亡保険に入るでしょうね。

 保険の加入時に気を付けたいのは、「お金の使い道」ではなく「金額」で考えること。

入院した時、進学した時――、などお金の使途別に分けると、進学には学資保険、入院には医療保険とたくさんの保険に手を出すことになってしまう。これは、お客様が非常に陥りやすい「間違い」です。

そもそも保険というものは、目的別の利用には向いていません。たとえば、老後の医療保険は、入院する確率などが高くなる分、保険料も高くなります。貯蓄型の保険にしても、手数料が開示されていない時点で近づかないほうが賢明です。実際、保険は金融商品の中でも破格の手数料率なので、資産形成などには不向きです。 つまるところ、利用しやすい保険は若くて健康な世帯主が急死したり、病気やケガで長期間仕事に就けなくなるといったレアケースに備える商品くらい。保険の利用は、必要最低限の加入にとどめたほうが良いでしょう。

長期の保険は
落とし穴だらけ

 時に、相続対策に保険を利用する方もいます。使い道としてはアリなのですが、まずは、金融機関に所属していない専門家に相談してください。以前、ある企業の御曹司が私のところに相談に来られました。銀行で自社株の評価額が5億円ほどあると言ったら、相続税の支払いなどを見込んで1億円の終身保険を勧められたというのです。保険料の総額は8000万円を超えます。そこで、相続財産の評価を複数の専門家に依頼するようにアドバイスしたところ、なんと、保険で用意する必要があるお金は約500万円ということでした。保険料は400万円強で済む話だったのです。 私はよく保険業界の方から「お客様をリスクにさらして平気な顔をしている」などと非難されます。でも、たとえば〝一生涯の安心〟なんてあるのでしょうか。私は幻想だと思います。

保険は10年後、20年後であっても、契約期間中であれば保障内容が変わらないのが原則ですが、契約が長期になるほど内容が時代にそぐわなくなる可能性が高くなります。世の中は常に変化しているからです。

私の知り合いの父親で、最近前立腺ガンにかかった方がいます。その方は80年代にガン保険に入っていたのに、いざ病気になった時、給付金を受け取ることができませんでした。理由は、通院治療だけで済んだからです。 当時のガン保険は入院保障と死亡保障は充実しているのに、診断給付金がありませんでした。ガンになったら、長期入院するのが当たり前だったのでしょう。医療の進歩に保険が対応できなかった事例です。一生涯、契約内容が変わらないということは、本当は怖いことなのです。

 こう考えるとわかりやすいと思います。「20年後、30年後にも似合う服、時代が変わってもダサく見えない服を現時点で選んで買えるか?」と自問してみましょう。好みやトレンド、体型や外見の変化を問題にしない選択は難しいはずです。保険だって同じだと思います。

私たちはもっと、保険会社に保険の疑問や矛盾を問いただしていくべきなのです。 複数の保険会社の立ち上げに関わった人が、保険会社の営業部門は新興宗教のビジネスモデルに近い、と言ったことがあります。それを聞いてふと気がつきました。「儲かる」という漢字は「信者」という言葉の組み合わせだと。

保険販売に関わる人は、保険を信じているほうが良いかもしれません。しかし私は、一人一人が保険を「正しく疑う」ことで、商品やサービスをより良いものにできると考えています。保険は、あくまでお金を用意する手段の一つ。冷静に向き合っていただければと思います。
(終)

出典:『インベスターZ 16巻』巻末記事

  • 後田 亨(うしろだ とおる)

    オフィスバトン「保険相談室」代表
    1959年、長崎県生まれ。長崎大学経済学部卒。アパレルメーカー勤務を経て、日本生命と複数社の保険を扱う代理店で約15年、営業職を経験。営業マンと顧客の「利益相反」を問題視し独立。2007年、「生命保険の『罠』」(講談社)がベストセラーに。2014年より現職。保険の有料相談に従事しながら、執筆・講演を積極的に行い、売手の都合から離れた情報発信を続ける。「がん保険を疑え!」「保険会社が知られたくない生保の話」など著書多数。

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保険における確率論、原則論をまとめた最新の著書。「入っておけば安心」という感情論から脱し、シビアに保険を見直すきっかけとなる一冊。

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