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若者たちへ~出井伸之が見通す「2027年の世界」(中編)

【前編はこちらから】

「何を持っているか」は重要じゃない

 私のところには現在、ビジネスによって世の中を変えようと志す若きベンチャー起業家たちが多数アドバイスを求めてやってくる。インターネットの普及によって、社会の中心が大企業から、より小さなベンチャーや個人に移りつつあることは既に述べた。若き起業家の前には、大きな可能性の海が広がっている。

 誰もが、どこにいても、瞬時に同じ情報を得る時代。

インターネットは国境を越え、地球は小さく、かつ均質化していく。

 これまでは、一部の企業が情報を握り、それを顧客に提供することで対価を得るビジネスモデルが主流だった。マスコミや広告業界、弁護士や会計士などのあらゆる専門家、教育産業だってそうだ。その企業しか持たない知見やデータは価値あるものとして尊ばれ、情報を上から下に流すことでビジネスが成立した。技術についても同じことがいえる。研究開発によって新しい技術を発見し、特許によって囲い込むことで、他社と差別化する。1つの技術は1社の中にとどめられるのが、これまでの常識だった。

 しかしいま、情報はどんどんオープンになり、人々に共有されていく。国家や企業が情報を囲い込もうとしても、インターネットは軽々とその壁を越えていく。

 大事なのは、この動きに逆行しないこと。

 むしろ積極的に情報や技術を社会の中で共有し、他者とのコラボレーションによって価値を生もうとすることだ。情報や技術を自前で持っている必要すらない。なければ、よそから借りればいい。それらをいかに組み合わせて、ユニークな発想でものやサービスを作っていけるかが、事業の生命線となる。

 例えばいま、「MVNO(Mobile Virtual Network Operator=仮想移動体通信事業者)」の成長が話題になっていて、日本でも広がりをみせている。携帯電話などの物理的な回線網と、各端末の電話番号をキャリア (通信事業者) から借り受け、自社ブランドで通信サービスを提供する事業者のことである。キャリアのように無線基地局を自ら開設しなくても事業ができるので、アイデアさえあれば、さまざまな業界から参入できる。

 最近では、グーグルがMVNOに参入すると発表した。グーグルのようなガリバーがユニークなサービスを提供し始めたら、既存の通信業者にとっては大きな脅威だ。そうなると、電話会社間の価格・通信量・サービス品質といったキャリア競争なんて、あっという間に問題にならなくなる。

 ここで重要なのは、「何をやりたいか」。手段は人に任せてもいい。むしろユニークなサービスを発想し、提供することで顧客から選ばれる。実にインターネット的な発想だと思う。

ハードよりソフトの時代。

「何を持っているか」より、「何をやりたいか」。

 顧客に魅力的なサービスをできる企業が勝つ。

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