特別インタビュー・名経営者に聞く

若者たちへ~出井伸之が見通す「2027年の世界」(前編)

ソニーグループのトップを10年務めたカリスマ経営者であり、退任後も新産業・新ビジネス創出の実現を目指し、活躍を続けている出井伸之氏。

出井氏が見通す未来の社会と、若者へのメッセージを3回にわたって掲載する。

クオンタムリープ株式会社代表取締役
出井伸之氏

あと12年で世界は様変わりする

 私には、15歳になる孫娘がいる。

 孫娘はバレエが大好きで、将来は舞台女優を目指すか、ビジネスの道に入るかで大いに悩んでいる。あるとき、彼女と「これからの激動の時代に、若い君たちはどういう人生を生きていくべきか」について語り合った。対話を通じて、彼女が、好きなことと仕事のバランスをどうとって生きていくのかを真剣に考えていることがわかってね。大人並みに情報収集し、疑問をぶつけてくるものだから、私にとって思いがけない刺激的な時間になった。

 

私と孫娘の年齢差は、だいたい60年になる。彼女がこれから生きる時代と、私が生きてきた時代は、大きく違う。しかし、いつの時代も幸せに生きるために必要なスキルはそう変わらない。「正しい場所で、正しい努力をする」ということだ。

 人は得てして、頑張っている人を見ると手放しで称賛する。確かに努力する姿は美しい。しかし、見通しもなくやみくもに頑張ればいいというものではない。スポーツ選手が、身体の仕組みやスポーツ医学を無視したトレーニングをいくら積んでも結果に結びつかないのと同じで、将来に向けての準備も、自分にとっての「正しい場所」を見つけて「正しい努力」をすることが大切なんだ。

 「正しい場所」に身を置くためには、自分がどういう時代を生きていて、その延長線上に何があるのかを客観的に知る必要がある。特に大事なのが、これから12年間の変化を見通すことだ。そこに何があるのか。私なりのビジョンをお話させていただこう。

 あなたは、いま何歳だろう?

 仮に社会に出たばかりの22歳だとすれば、いまから12年後の2027年には、34歳になる。12年後というと、まだまだ先のように思えるかもしれないが、あっという間のことだ。

 その間にあなたは、いまの仕事を辞めて、別の仕事についているかもしれない。あるいは、結婚して家庭で子育てに追われているかもしれない。日本以外の国で暮らしている可能性もある。個人の人生が12年でどう変化していくかは、千差万別で、予想は難しい。

 しかし、ひとつ確かに言えるのは、日本社会はこれからの12年で、これまで以上のスピードで激変していくということだ。

 多くのメディアが指摘するように、ますます少子高齢化は進行する。都市と地方の人口と格差も拡大する。年金や医療など社会保障の空洞化も進むだろう。そうした社会の諸問題は間違いなく到来する。それは避けようがない。

 だが、そうしたネガティブな問題が進行する一方で、あなたたちの世代はかつてないポジティブな社会の変化を体験することになる。しかもその変化は、18世紀半ばから19世紀にかけて世界を一変させた「産業革命」に匹敵するくらいのダイナミックさで、あなたたちの元を訪れる。

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