トップだって機能!と考えればいい
出口 そうなんですか! 信じがたいなあ(笑)。 フィーリングとか、直感と呼ばれるものって理屈っぽく言えば、脳が今まで生きてきた中で得てきたすべての情報を分析して、導き出した答えなんですよね。
三田 確かにその通りで、「これ、おもしろそう」 「この人、なんかいい」 っていうのは、これまでの情報から脳が出してきた正しい答えなんですね。
出口 だから、それを信じるかどうかっていうのは、自分を信じるかどうかの問題で、それを信じて流れに乗るほか、自分が「生きる楽しさ」って生まれてこないんじゃないかな。
三田 経営者というと、一般サラリーマンから雲の上のように感じられますが、実際その仕事ってなんですか?
出口 決断することですね。会社の規模は関係なく、トップというのは、誰かに決めることを託せないんです。※5
三田 その決断って、プレッシャーがあるものでしょうか。 それとも自分で決められる、いい意味での気持ち良さがあるんですか。
出口 うーん、僕は結構、仕事を「機能」で考えているんです。たとえば、人間の体を考えた時、頭が一番偉いと思いがちですけど、手足も目鼻も、ぜんぶ重要です。それと同じで、組織には決める役割としてトップがいますけど、営業も経理も、全部の部署が機能として必要なんです。※6
三田 仕組みの中で「決める人」としての自分がいるだけだと。
出口 ええ。自分は機能として今、「会長」を務めているという感じ。 その機能を一生懸命果たさなければとは思ってますが。
三田 今の若い人は昇進したくないとか、トップに立ちたくないというメンタリティを持つ人が多いように感じますが、そういう35 歳以下の人たちにアドバイスするなら…
三田紀房氏
出口 どんなポジションも、サッカーのポジションくらいに気軽に考えてみるといいと、僕は思います(笑)。
三田 そんなに構える必要はないよ、と(笑)。
出口 僕も「会社をつくりましょう」と言われて、「はい」と言ったから社長になったようなもので。まず「イエス」と言うところから、道は開けていくし、世界は変わっていきますよ。※7
三田 起業しようと思っても、もうちょっと準備してからと考える人が多く、アイディアがあるからと、パッと始めてみる人は少ないと聞きますね。
出口 それは絶対、すぐやったほうがいい。僕は旅先で何か買おうかと迷ったら、とりあえず買うほうを選びます。だって、その時しか買えないんですから。
※5 「どんな大企業でも社員なら上司や役員に判断を仰ぐことができる。一方、どんなに小さな会社でも自分が社長であれば、最後の決断は人任せにできない」(出口氏)
※6 「組織には、好き嫌いや美学を持ち込まない。機能で考えるべき。これも歴史書から学んだことですが、人の役割を機能で考えた国のほうが長続きしている」(出口氏)
※7 出口氏の語る人生充実法。「ある意味、毎日がイエス・ノーゲームの積み重ね。たとえば今日、友達に飲みに誘われたとして、「ノー」と言えば家に帰って寝るだけ。でも、飲みに行けば何もないかもしれないけど、素敵な人に出会えるかもしれない。自分が動けば可能性や選択肢はどんどん増えていくんです」