海外投資・海外不動産・海外移住についてのアドバイザー業務を行う「S&S investments」を経営し、自身も2012年に家族でシンガポール移住を果たした岡村聡氏。彼の主要な顧客ターゲット層である富裕層には、若手起業家や投資家が多く含まれる。そうした革新者たちの動向に詳しい岡村氏に、チャンスをものにする方法を訊いた。
「マイノリティが正しい」瞬間に見抜く
投資家や起業家で成功した人たちの特徴をつぶさに見ていくと、まず言えることは、
”あまのじゃく”が多いということですね。権威がある人たちの話を積極的に疑ってかかるようなタイプです。
今の時代、世の中でたった1人しか知らないような情報をつかんで投資や事業で成功することは難しい。
だから、勝つかどうかはスタンス次第。投資で言えば全戦全勝の人なんていなくて、どこかで大勝ちする人が強い。
けれど、マジョリティの意見に従っているうちは、大勝ちはできません。
稀にある、マイノリティが正しいという瞬間が見抜ける人、その時に動ける人には素質があると言えますね。
例えば、今からシンガポールで日本人がビジネスを始めるようではもう遅いかもしれません。私自身、シンガポールは大したことがない、日本に比べるとまだまだじゃないか、と言われていた2年前に移住して事業をやったからこそ素晴らしいお客さんにも恵まれ、ネットワークを広げることが出来たんだと思っています。
なぜシンガポールの可能性に気づいたかといえば。
東日本大震災後、ナーバスになっていた娘のために、家族でシンガポールへ遊びに行った際、シンガポールの現状を見ることができたからです。
その時は、たまたま紹介された高級不動産のブローカーについていって、いろいろなところを見て回ったんです。
そこで私は、10億円以上の不動産が次々と売れていてクルーザーなんかもたくさん泊まっている……なんて光景を目にしました。
マイナーなところに目を付けるだけでなく、機会を見つけては実際にいろんなところに飛び込むというのも大事です。このことがきっかけで、ここに拠点を持たねばと思いました。
独占的なネットワークを築け
投資や起業で成功しようと思うなら、自分の感性を磨くのも大事ですが、エッジのきいた人と知り合ってその後を追うとういことも重要です。
例えば、『インベスターZ』にも度々登場する、伝説的な投資家のウォーレン・バフェット。
彼はシェールガス革命のある部分に注目して利益を出したと言われています。彼がシェールガス革命で描いたシナリオは「ネバダ州でガスが湧くから、そのガスを運ぶ鉄道会社が儲かる」というものでした。シナリオを描くには、まず情報が必要。情報を仕入れるためには、ネットワークが必要です。
そういう意味では、シンガポールの起業家ネットワークは最高ですよ。各分野で最もエッヂのきいた人が今何に注目しているのか分かるんです。
私がターゲットとしている月300万の家賃のワンルームとか、高級ホテルの上層階に作られた高級住宅の情報は、いくらネットで調べてもでてきません。そういう「知る人ぞ知る」ピンポイントな情報を持つ人と、いかに独占的なネットワークを作れるかが重要なんです。
少し知識のある人は、不動産の買い取りはオークションが一番儲かると思っているかもしれません。
ですが、オークションでは一番高値をつかむことになるので、実はそんなに儲からない。
一番儲かるのは、「うちが売るならあなたのところしかない」という”指名”を社長から受けるケースです。
そこで買い叩くと長期的な信頼を失うのでやりませんが、そういう関係を作っておけることが重要です。
投資家のピーター・ティールが書いた『ゼロ・トゥ・ワン』という本にもありましたが、大事なのは「いかに独占を築くか」ということ。
投資も、ファイナンスの理論なんかでは差別化できませんよ。
理論に従ってバリュエーションをつけても、ほとんどどこも同じ数値に収束していくでしょう。そうなると利回りをどこまで下げられるかというチキンレースが待っているだけ。そんなマーケットに絶対“旨み”はないんです。
世の中に出回っていない情報をつかんで、そこに投じられるお金を持っていることこそが重要なんです。
シンガポール初訪問から、2年で現地法人設立を決断した岡村聡氏の著書
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マッキンゼーで気づいた「軸をずらす」必要性
私は起業する前、マッキンゼーというコンサルティング会社に勤めていました。
“世界一”や”最強のコンサルティング会社”などの呼び声高いところを辞めて起業したのはまさしく
「あまのじゃく」だと自分でも思います。
マッキンゼーは一言でいうと「プロ野球」みたいな世界だったんです。
その年に各都道府県で一番速い球を投げる選手、遠くまで飛ばす選手が次々と入ってきます。
その中からスタメンと控え、
一軍と二軍といった具合に分かれていきますが、本当に微妙な実力差と、
それから”運”で決まっていくんですよ。
先ほど例にあげたピーター・ティールが、元々目指していた最高裁のインターンという狭き門に僅かな差で落ちてしまって
落ちこんだ、という話にはとても共感できます。
特に私の2~3個下の代は綺羅星のような世代でした。
mixi元社長の朝倉さんなどが代表選手ですが、彼らは当たり前のように英語を話せる。
そこで僕は、この中で熾烈なビジネスパートナーの獲り合いをするより、
「軸を1つずらしてみよう」と考えたんです。
個人向けの、まだもともなサービスが立ち上がっていない分野でまっとうな事業をやれば勝負できるだろうと。
軸のずらし方はいろいろあります。例えば地域による軸のずらし方。
最近、ロンドンの高級不動産の情報がシンガポールに入ってきているんです。
シンガポールの不動産の値段が高騰してロンドンやニューヨーク変わらなくなってきたので、
シンガポールの富裕層は資産を海外に分散し始めたんです。
そうするとロンドンの業者がシンガポールにやってきます。
その業者に訊いてみたら、海外を回るときはシンガポール、香港、ドバイと渡ってロンドンに戻るそうです。
つまり東京では絶対に手に入らない情報がシンガポールなら手に入るというわけです。
私たちの会社はそこと提携して、日本の富裕層向けにロンドンの情報を流しています。
ほかにも、「カリブ海のシンガポールを作る」といって法人税をたったの4%にしているプエルトリコとか、これから経済発展していくであろう中近東のハブになりそうなドバイなど、注目の地域はあります。
ここに「日本の富裕層、移住者」という要素を掛け合わせるだけで、
まだほとんどの人がやっていない、独占的なマーケットが作れるはずです。
絶対勝てない相手に、早いうちに出会えた幸運
どうして、「軸をずらした」世界に飛び込めたかというと、
灘中学校に通っていた時代に原体験があるかもしれません。
当時の同級生に、現在物理学者として活躍している立川裕二君がいるのですが、彼は昨年、35歳以下の
理論物理学の権威に与えられるヘルマン・ワイル賞というのを受賞しました。
彼は学習塾から僕と同じだったんですが、次元が違いました。
柔道家が言う、「組んだ瞬間にわかる」というやつですよ。
私もそれまでは数字が得意で好きだったので、将来は数学者になろうと考えていました。
けれど、立川くんに出会うことで一変しました。
彼は、中学1年生にして偏微分方程式を解き、物理の先生にもっと簡単な解放があると説明して、
先生が分からないと「なんでわからないんですか!」と怒り出すんです。
その時、「こういうやつと同じ土俵でやってもだめだ、ずらさないとな」と自覚したんです。
ちなみに、彼には可愛いところもあって、体育の授業で野球するとき、バットの握り方が分からなかったりした(笑)。
そこで僕が教えてあげたんですよ。
そうやって間近で「突き抜けた人」を見て、
その人に出来ないこと、勝てることを見つけるという経験を12歳とか13歳といった時期に味わえて本当によかったと思っています。
そのまま数学者を志し、ポスドクになって初めて気づいたのでは取り返しもつきにくいし、
コンプレックスにもなりかねないですからね。
実際、ウォール街で活躍している人の中には数学者や物理学者くずれが多いんですよ。
この漫画の主人公の財前君も今は名門「道塾学園」の首席だと聞いていますが、
彼もこの分野では絶対に勝てないなと思える同世代に出会うと、また見える世界が変わってくるかもしれませんね。
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岡村 聡(おかむら さとし)
東京大学工学部卒。東京大学大学院学際情報学府卒。経営コンサルティングファーム
McKinsey&Company(マッキンゼー・アンド・カンパニー)を経て、
国内大手PEファンド、アドバンテッジパートナーズに勤務後、2010年11月、
妻と二人で、株式会社S&S investmentsを立ち上げる。株式会社S&S investmentsホームページは こちら
出典:インベスターZ8巻巻末記事
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