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経済番組『岡崎・鈴木のマーケット・アナライズ』のキャスターである岡崎良介さんは、投資家からの信頼が厚いストラテジストだ。
経済・マーケット情報を発信し続ける岡崎さんに、投資の心得と楽しみを聞いた!

■「善悪」を捨て「損得」で考える

まずは肝に銘じてほしい考えが、ひとつあります。
「投資とは、損得を基準に発想するゲームである」
ということです。ふつう、私たちが日常生活を送るうえでは、損得という基準をあまり前面に出しませんね。どちらかといえば建前として、善悪の基準を持ち出すことが多い。 

でも、投資の世界は、善悪では動きません。最終的に、利のあるところにすべてが流れていきます。どれだけ損をしたか得をしたか、数字ではっきりと結果が示されるのです。そういうルールでできている世界だと、認識するのが第一です。

たとえば、かつて湾岸戦争という大きな出来事がありました。1991年1月に米国を中心とする多国籍軍がイラクを空爆。その様子はテレビ中継されて全世界に衝撃を与えました。その光景をテレビで観て、優れた投資家は電話に飛びつき「すぐに米国の債券を買ってくれ!」と叫びました。この様子では、あっという間に米国の勝利で戦争が終わると見てとったからです。湾岸戦争に賛成か反対か、多国籍軍の空爆は善か悪かは、投資活動においては問う意味も暇もありません。そんな簡単に答えが出る問題でもないので、議論をし続けていてはタイミングを失するだけです。

この世界では一般の生活感覚とは切り離して考えるしかない。投資には、二重人格になるくらいの大胆さと割り切りが必要となります。損得をすばやく考える強欲さがなければ、投資で勝つことはできません。ただし、あまり強欲すぎてもいけない。自分の欲をうまくコントロールしなければいけません。
損得を基準に、ドライに自分を律することさえできれば、投資の経験が浅かろうが、住んでいる場所がどこであろうが、年齢や学歴や職歴などだって関係なく、勝ち目は出てきます。株式市場の前では、誰もが平等。個人の心がけと意志だけで、世界中の企業、投資家たちと太刀打ちできるのです。他ではなかなか味わえない経験ができるはずですよ。

■投資は、完結させてこそ学びがある

投資の感覚を養うのにいい方法は、自分の「作品」をとにかく完成させること。つまり、トレードを一度、最後までやり切ってみるのがいいでしょう。そうしてこそ、たくさんの気づきを得られます。

格好の例が、『インベスターZ』に出てきます。財前くんが投資部に足を踏み入れたばかりのとき、「ゲーキチ」株を一気に30億円買いましたね(3話参照)。思い通りには値が上がらなかったので売り払い、取引をいったん完結させました。あの行動、財前くんはやはりセンスがありますよ。
自分でゲーム業界に狙いを定めて、実際に買ってみる。値動きを真剣に追いかけ、なぜそう動くのかに考えを巡らし、損得を確定させる判断まで自分の責任でする。一連の流れを経験した後は、検証もきちんとしましたね。マーケットが実は思ったほど大きくないので、ゲーム業界はもう買わないとみずから決めました。

たしかにゲーム業界のマーケットは、入り口も出口もあまり広くない。少しでもいいニュースが出回ると入り口に人が殺到して株価は上がりますが、悪くなってきたときにも出口に人が押し寄せ、値はどんどん下がる。
財前くんは、ふつうの投資家が5年ほどかけて学ぶことを、たった数日で身を持って体験しました。ひとえに彼がトレードをやり切り、自分の「作品」をひとつ仕上げたからです。これからどんどん投資をしていこうという人は、彼を見習うべき。少額でもいいし、1週間など短期間でもいいので、とにかくトレードをひと通り完結させてみてください。

どんな銘柄を、どれだけ、いつ、どう買うのか。推移をどう見て、売るタイミングをどのように計るか。考えることはたくさんありますが、一度やってみれば、次からはその応用です。判断の感覚は場数を重ねて覚えるしかなく、まずはその一歩目を踏み出すことが大切なのです。
完結させる期間は、数日でも1週間でもいいのですが、株式投資の場合は半期、つまり半年が基本単位の目安。それくらい継続してひとつの株を眺めてみれば、値動きの様子もよくわかるようになると覚えておいてください。

■投資信託の開示情報でプロのお手並み拝見

投資のサイクルをひと通り経験してみようとすれば、何らかのお手本が欲しくなりますよね。ならば、プロが運用している投資信託を覗いてみるのもいいでしょう。

日本の銘柄で運用されている投資信託は、ざっと千ほどあります。それらは毎月、投資判断に必要な情報を記した「目論見書」の一部を開示しています。運用している上位10銘柄が、ウェブサイト上で見られるようになっていることが多いのです。さらに決算のときには、全投資先を知ることができます。
見れば、「なるほどプロはこんな銘柄を持っているのか」「こういう組み合わせにしているんだ」と実地に分かります。もちろん丸ごと真似する必要はありませんが、参考になるところがあれば大いに活用しましょう。

眺めていると、プロが選ぶ銘柄・組み合わせといっても、さほど奇抜だったり、ふつうの人が知らない銘柄を扱っていたりすることはあまりないと気づきます。上位に並んでいるのはトヨタ、ソフトバンクなど、単に時価総額の多い順だったりすることもありますよ。
奇手を繰り出す投資信託もありますが、そういうところが際立った結果を残しているともいえません。投資の世界には、絶対に成功するという定石や、プロだけが繰り出せる高等技術、一部の人たちのみ知り得る特別な情報といったものはないのですね。プロとアマの差だって、さほど大きくありませんよ。

だから、ひょっとするとこれを読んでいるあなたが画期的な投資戦術を編み出して、それが近い将来、国際的なモデルとして広く知られていることだってあり得ます。誰にでも等しくチャンスがある、それが投資のいいところです。
また投資は、世界をガラリと変える力も秘めています。かつて投資家ジョージ・ソロスは独力でポンド危機を引き起こしましたし、近年ではリーマンショックも、マーケットが世の流れを変えた例といえます。

そう考えると、投資ってかなり「パンク」だと思いませんか? 私がこの分野に関心を持ったのも、世の中をひっくり返すパワーをそこに感じたから。常識に縛られることなく、思い切ったことをして、ぜひゲームを楽しんでみてはいかがでしょう。

  • 岡崎 良介 (おかざき りょうすけ)

    マーケットアナライズ代表、ストラテジスト。
    大学卒業後、伊藤忠商事、日本バンカース・トラスト信託銀行などを経て、
    フィスコアセットマネジメントの設立に運用担当最高責任者(CIO)として参画。その後フリーに。BS12chTwellV(トゥエルビ)
    『岡崎・鈴木のマーケット・アナライズ』(毎週土曜日13時~放送)に出演中。

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