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2017/01/16

【人気のため再掲載!】「東大流投資術」の極意   「ドラゴン桜」「インベスターZ」の三田紀房、気鋭の美人アナリスト三井智映子に東大生投資家が挑む!

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中学生投資家の成長や挫折を描いて話題の『インベスターZ』(「モーニング」連載中)の著者・三田紀房氏が東大駒場キャンパスに乗り込み、東京大学2年生で株式投資を実践中の小林大輝さんの投資術講義に臨みました。フィスコリサーチレポーターとして投資情報を発信する注目の”美女アナ”三井智映子さんも加わっての活発な投資ディスカッションの模様をお届けします。

※当記事に採録された発言及び見解は、イベントが行われた2013年12月20日時点のものであり、また、特定の証券又は金融商品の売買の推奨及び勧誘を目的としたものではありません。

「ドラゴン桜」から「インベスターZ」へ

三井: 東大受験をされた皆さんなら読まれたことがあるかなと思いますが、『ドラゴン桜』、そもそも受験を題材にしようと思ったきっかけは何なのでしょうか。

三田: これはですね、わりとこういう漫画雑誌ってラフな企画の立て方でして、「何かないっすかね」みたいなノリなんですね。で、たまたまモーニング編集部のほうから熱血学園教師モノの漫画をできないですか、みたいな話が来たんです。

でも、ただ普通にそういうものをやってもなかなかうまくいかないだろうっていう予感があってですね。じゃ、三流高校から東大へ、そういうちょっとスポ根チックな筋立てならうまくいくんじゃないか、と思いついたんです。

三井: 実際、東大受験をされた小林さんは、『ドラゴン桜』を読まれてたんですか。

小林: もちろん読みました。『ドラゴン桜』を読んで東大を目指したというぐらいなので。

三田: もう絵にかいたような読者ですね。うちの企画に見事にはまってくれた。

小林: (笑)。読むまでは、東大への進学なんて考えたことなかったんです。地方出身なので、東大は遠い海外のような存在でした。ですが、親が『ドラゴン桜』の漫画を買ってきまして、読んでみたら、「あれ? これ意外に東大に行けるんじゃないの」っていう気になりまして、それで、実際に東大を目指すようになりました。

実際のところ、僕の友達にもたくさん『ドラゴン桜』を読んだ人はいますし、東大生、『ドラゴン桜』を読んで東大を目指したっていう人は多いんじゃないかなというふうに思います。

三田: 本当なら受かるはずの人が、実は東大を受けてなかったっていう例が結構多いんですよね。進学指導の先生は、「落ちる」っていうことにすごく恐怖感を感じるんですね。だから、なるべく受かりそうなところをみんな勧めるんです。で、子どもってわりと素直なんで、本当は東大に受かるんだけど、別の「○×大学でいいんじゃないか」みたいなことを言われると、そうしてしまう。

三井: もしかすると、挑戦すれば(早稲田大学出身の)私も受かったかもしれないですね。

三田: そうなんですよ。実は、意外と受けると受かるんですよね。特に地方のまじめな子なんかは、ものすごい勉強するんで。

三井: そして、今、「モーニング」誌上で連載中なのが『インベスターZ』。どうして今度は投資をモチーフにしようと思われたんですか。

三田: これはですね、「タダの学校ってどうやったらつくれるかな」って、要するに授業料がゼロ、入学金もゼロ。中高一貫校で、6年間教育費一切タダっていう学校ってどうやったらつくることできるかなと考えたんですね。そうしたら、学校の創設者が最初に資金をドーンと出して、それを資産運用して、利回りで学校経営をするということならできるなって思ったんです。

じゃ、その資産運用を誰がするかってなったときに、学校の経営陣、あるいは学校の先生、要するに大人がやってもおもしろくないなと。で、子どもにやらせる。要するにそこの生徒が投資部というものをつくって、そこで資産運用をすると。子どもが投資をやれば、これはおもしろいんじゃないか、というので始まりました。

三井: 主人公は中学一年生ですしね。私、道産子なんで、舞台が北海道でちょっとうれしかったんです。なぜ舞台を北海道にしようと思ったんですか。

三田: これはね、だいたい普通に考えれば東京とか横浜とか関東近郊でいいんですけど、創設者が資金を出すときに、その舞台がどこかというリアリティが必要なんですね。で、明治時代になんか一発儲かった人じゃないと、リアリティがないなと。一発儲けるところってどこかなと思ったら、北海道は日本のフロンティアで、開拓地だから、良いと思った。実際のところ、土地も広いから大きな学園を建てるにもうってつけかな、と。

もうちょっと説明すると、この漫画、アメリカ西海岸のスタンフォード大学が出てくるんですが、この大学のできた経緯っていうのが、だいたい似ているんですよ。ていうか、実はスタンフォード大学の話を、これに合わせたっていうとこもあるんですけど(笑)。

スタンフォード大学をつくった人がアメリカの”ゴールドラッシュ”で儲けた人なんです。もともと弁護士だったんだけど、西海岸に渡って、雑貨屋さんを始めた。要するに金を掘るブームが起きたときに、「金を掘る」んじゃなくて「金を掘る道具を売った」人なんですね。

金を掘って金持ちになった人は、ほとんどいないんです。でも彼は、スコップとかツルハシとかを売って儲けた。そこから今度は成した財で大陸横断鉄道を敷いた。その事業にドーンと投資して、それで大儲けした。そのお金で、「カリフォルニアに、東海岸のハーバードとかに負けない大学をつくろう」と、スタンフォード大学を作った。

三井: 主軸の事業ではなく、関連事業で儲けた、と。

三田: そういうことですね。トレンドの「儲かっている事業」そのものを手掛けるのではなくて、その周辺にある、「今後、伸びるであろう事業」に行ったっていう人なんです。

小林: 戦争が起こった時に誰が一番儲かるかと言えば、実は戦争当事者じゃなくて、その武器をつくっている武器商人が儲かるっていう、武器商人スキームですね。

三井: 私たちも株式を探すとき、やっぱり関連銘柄を探します、本筋よりも。

三田: つまり、いわゆる素材関連とか、そういうところが実は一番儲かっているとかね。

三井: しかも、トップシェアとかってやっぱり強いですね。

三田: だから、『インベスターZ』の時代背景とか舞台設定は、日本で投資が盛り上がったであろう場所を自分なりにいろいろ分析して決めましたね。

東大流投資術 ドン・キホーテを攻める

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三井: それでは、「東大流投資術」ということで、ここで小林さんが先日ゼミで発表された発表をしてくださります。

小林: 今回は、みんなが知っていて、身近な企業がいいと思い、ドン・キホーテについて皆さんと一緒に分析を加えてみたいと思います。今回のポイントは「来るべき不況に立ち向かう」です。

2014年4月からの消費税の8%への増税、さらに2015年10月に10%まで上がるんですけれども、やはり消費税を増税しますと購買意欲が低下すると予想されます。実際に、以前消費税が5%に増税したときも、非常に小売業全体の売上が落ちました。

小売業全体の売上が落ちる中でも、ドン・キホーテは勝ち残ると見ています。不況に立ち向かう姿はさながら原作のドン・キホーテと重なりますが、今回は勝てる見込みがあるのではないか、ということが違うところです。推奨はBUY(買い)です。

ストーリー上で重要なポイントは3つあります。

1つ目がダウンサイドリスクが非常に少ないということです。やっぱり皆さん、せっかく稼いだお金が、株で知らぬ間に目減りしてくる状況って見てられないですよね。そういう中で、このドン・キホーテ、非常にダウンサイドリスク、すなわち株価が下がるリスクが少なく、おそらく安心してホールドできるというふうに考えています。

2つ目がドン・キホーテの持つ明確な競合優位性です。ドン・キホーテは競合他社が持ち得ない非常に強い優位性があり、今後も同社を利用する顧客は増えていくでしょう。加えて、同社はMEGAドン・キホーテという新しい成長業態を確立しつつあり、これが今後の成長を牽引すると考えています。

3つ目が、ディフェンシブ銘柄としての優秀性。これが先ほど申し上げた、不況でも業績を落とさずに伸びていけるのではないかということにつながります。

「ハズレ」のない業績

さて、以上のことを頭にいれながら話を進めましょう。このドン・キホーテ、どういう企業かといいますと、皆さんご存知の通り、あの楽しいディスカウントショップを運営している会社なのですが、他にもGMSの長崎屋やHCのドイトも現在では傘下に入れています。長崎屋であれば、皆さんの中にも知っている方は多いかもしれません。

続いて、ドン・キホーテの業績の概要を見てみますと、この企業はリーマンショックすらも乗り越えて24期連続の増収増益を達成しています。

ドン・キホーテは売上高が非常に大きい企業でして、イオンであるとかセブン&アイに比べればまだまだなんですけれども、侮る無かれ、現在、5600億円程もあり、小売業全体でもトップクラスの売上を誇る巨大企業なんです! 営業利益率も同業他社のDSに比べて非常に高いなど、非常に安定した業績を上げ続ける企業です。

一方で、ドン・キホーテの会社計画というのは非常に保守的です。例えばめちゃくちゃな計画を立てて、「俺、できるよ」と言ってたのに、「ごめん、やっぱり出来なかった。実際にできなかったよ」と言う人には、皆さん失望しますよね。株式市場も同じで、会社が出来ると言った計画を実際には達成出来なかった時、株価は落ちます。

そういう中で、ドン・キホーテは毎回保守的な計画を立てているために、結果として業績が下方修正よりむしろ上方修正に終わることが非常に多く、仮にも株価が上がらなかったとしても、決算時に下がることは少なく、決算をまたいでも安心してホールド出来る企業だと思います。これが、ダウンサイドリスクが少ないということです。

思わず立ち寄りたくなる店舗戦略

皆さん「業績が伸びているのは分かるが、どうしてそんなに伸びているかわからない」という顔をなさっていますね(笑)。私は、ドン・キホーテがここまで強い理由は、ドン・キホーテその店舗の作り方、そして商品の「見せ方」にあると考えています。皆さん、ドン・キホーテには、なんとなく「行けば何か楽しいモノがある」、というイメージがありませんか?

同社は、顧客の来場に対するインセンティブをつくるっていうのが非常にうまい企業だと考えています。実はこれが非常に重要です。

楽天やアマゾンといったインターネットショップでは、もはや店舗に行かなくてもその場でほぼあらゆる商品が買えてしまう。みんなわざわざ物を買うのに家を出て、店に赴く必要がない時代です。その中で、じゃ、どうやって顧客に足を運んでもらうか。「店舗に行かないと得られないもの」を提供できないと誰も店に来てくれなくなる、そんな時代がもうすぐそばに迫っていると私は思っています。

ドン・キホーテは、独特の手書きPOPや、商品をめちゃくちゃ高く積んで、どこに欲しい物があるのかわざと分からなくすることによって、顧客に宝探し感覚であるとかワクワクする感覚を与えて、顧客に「ドンキに来たい」と思わせるのがすごい上手な企業だと思っています。これが、ドン・キホーテがこれから生き残っていくと私が考える最も重要な根拠です。

優位性を更に発展させた新業態

同社はそのような競合優位性を持った業態を更に発展させた新業態「MEGAドン・キホーテ」を近年、精力的に開発してきました。これは買収した長崎屋の再建過程で確立したものですが、イメージ的には、例えば今まで港とか限られた地区にしかなかったコストコのような食品から家電まで揃う超巨大スーパーみたいなものです。

この業態の営業利益率が近年大きく改善されていて、どうやって人を置けばいいか、どういうふうにして商品を置けばいいかということが分かってきたため、今では長崎屋を改装したものではなく、新規店舗として「MEGAドン・キホーテ」が地方へどんどん出店していっています。

不況に負けない体質

最後に、これから起きるイベントである消費税増税の話をしたいと思います。私は、ドン・キホーテなら、これを乗り越えられると考えています。普通の企業であれば、消費税増税というのはダウンサイドになるはずなんです。消費者の購買意欲が落ち込み、節約志向が高まりますからね。

ここ20年でも何度も不況はありました。小売業全体の総売上が逓減していく中で、同社はすくすくと売上を伸ばし続けてきました。注目すべきはリーマショック後、セブンやイオンなどが軒並み赤字転落や大幅な減益になる中でも、同社は売上高を15%以上伸ばしています。

その後、不況が続き小売業の株価が低迷を続ける中で、同社の株はいち早く回復し、TOPIXに対しても大きくアウトパフォームしています。同社のもともとの強みであるディスカウント商品の販売は、節約志向の消費者にも歓迎されるはずであり、過去の傾向も考慮すると、他の同業他社に比べて同社は消費税増税による不況にも勝っていけると考えています。

以上、①期待を裏切らない業績②明確な競合優位性と新しい成長ドライバーの確立③不況への耐性、という点を兼ね備えた同社は今後、資金流入が進むのではないかと考えています。

NISAで狙うべき銘柄とは

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三井: ありがとうございました。すごく分かりやすかったですよね。補足しますと、一月から少額投資非課税制度の「NISA」という制度が始まりましたけど、この銘柄はNISAにも向いていると思われます。

小林: NISAには税金のかからない枠がありまして、その枠を超えると税金が掛かるのですが、越えない限り、売買益には税金がかからないんです。そういう中でドン・キホーテ株は大きく下がるダウンサイドリスクが少なく、ゆっくりと安心して値上がりを待つことが出来る。NISAは基本的には一日10回とか売買するのでなくて、ずっと持っておく株のほうが適しています。

三井: 限度額があるというお話が出ましたが、NISAというのは100万円までのショッピング枠があると思っていただいて、一回売ってしまうとその枠はもう消滅しますよっていうシステムなんですね。で、一年目、二年目、三年目と100万円ずつ枠が一年間で用意されるみたいなシステムです。

ですが、NISA口座ではない通常の口座で、たとえばドン・キホーテの株を買ったとして、それが20%上がったとするじゃないですか。その利益に、2014年からは20%の税金が掛かるんです。

小林: 税金が増えるんです。

三井: そう。正確に言うと、税金がもとに戻っちゃうんです。20%ちょっとになっちゃうので、せっかく20%上がっても、そこの利益に20%ぐらいの税金がかかってくる。ですが、NISAでやると100万円以内の額で買った株に関しては税金がかからないというシステムなんです。

小林: 基本的に、株は1株では買えないんですね。だいたい100株ぐらいの単位で買わなきゃいけないんですけど、ドン・キホーテだったら100万円以下で、その単元株が買える。

三井: ですので、その中でたとえばドン・キホーテの株を買って、なおかつ、その余ったお金でちょっと違うとこを買って、できれば五年間せっかくなので持っていただいたほうが配当も付く、と。

配当っていうのは利子みたいなものです。その配当も非課税、税金がかからないので、長く持っていただいたほうがよりお得なのではないかと。なので、できればドン・キホーテみたいに安心して持てるような銘柄がNISAに向いているんじゃないかなと思います。あとほかに、投資するのにおすすめな銘柄はあったりしますか。

小林: 冒頭のお話の中で、「本流を買うんじゃなくて、亜流、傍流を買え」というご意見がありましたけど、そういう意味では福島工業という会社は面白いかもしれません。『インベスターZ』の中でセブン&アイ、すなわちセブン-イレブンをやっている企業が出てきたと思うんですけれども、実はこのセブン-イレブンにアイランド型のショーケース、冷蔵庫を納めている会社があります。

皆さん、最近コンビニでスイーツを買って食べるようになりませんでしたか。近年、コンビニではローソンのウチカフェであるとか、非常にスイーツに対して力を入れています。その流れで、スイーツ商品が増えてきたんです。そうすると、今までの小さいスペースで売っていたのでは、見せ方も上手くいかないし、商品も並べにくい。そこで最近開発されたのが、アイランド型のショーケースなんです。要は壁にへばりついている棚じゃなくて、店の真ん中の方に島型の大きな冷機が置かれるようになりました。

そこにいっぱいスイーツが並べてあるんです。中野冷機という会社は、セブン-イレブンにアイランド型のショーケースを納めている企業です。なので、セブン-イレブンが伸びれば、中野冷機から出荷されるアイランド型ショーケースの出荷も増えて中野冷機が儲かるという、そういうストーリーになっています。

先ほど三田さんがおっしゃっていた、「金を掘る人じゃなくて、金を掘る人に対しての商品を売る人になれ」という、その企業の一例として中野冷機は挙げられると思います。

三井: 私も実は『インベスターZ』を読んでいて、セブン&アイホールディングス関連でコンビニのおにぎり、あそこのおにぎりをつくっているわらべやさんという会社があるんですけど、そこに今注目しています。

今、お米の収穫量がだいぶ多くて、お米が安くなっているんですよ。安くなっている状態でセブン&アイにおにぎりとかお弁当とかを卸しているので、中食企業の最大手なんですけれども、ここもセブン&アイホールディングスさん、セブン-イレブンさんが繁栄すればするほど儲かるということになります。このストーリーを考える工程が、株のおもしろさでもありますね。

インベスターZの秘密、美人アナリストの秘術

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三田: ちょっと僕なりに付け加えると、要するにセブン-イレブンというのは、日本最大手のコンビニ企業なわけですね。で、さっき出てきた福島工業という企業は、最大手のセブン-イレブンが納入業者として選定したわけです。

それが、おそらくそのアイランド型保冷器の開発をした様々な開発メーカーの中で、福島工業がナンバーワンであるという証明になると思うんですね。最大手企業と一番多く取引している企業というのは、やはり確実な情報じゃないかなと僕なんかは思います。

そのセブン-イレブン株について描いた回は単行本3巻に入るのですが・・・そうそう、『インベスターZ』というタイトルなんですけど、なんでZかというと、とりあえずなんかZをつけておくとヒットしそうだなっていうのがあってですね(笑)。

タイトルをつけるときっていろいろ考えるんですけど、投資家って英語でインベスターって言うんですよ。で、いわゆるタイトルで「ヒットするタイトルの都市伝説」みたいなのがあって、「濁点と『ん』が付くとヒットする」っていう。それに倣ったんです。

三井: 『ドラゴン桜』にも付いていますものね。

三田: 『インベスターZ』っていうタイトルは、そのインベスターにZを付けちゃえっていう、わりと単純な発想なんです。で、主人公の中学一年生は、男子六人で構成される「投資部」で投資活動をやっているんですけど、これに対抗する女子中学生の女子投資部というのが本編にこれから出てくるんですね。

その女子投資部は、10万円から投資を始めようというコンセプトなんです。女の子三人が、なけなしのおこづかい10万円ずつを自分の資金として使って、そこから投資をする。最初に買う株がセブン&アイですね。コンビニに行って、その女の子たち三人がコンビニの中にどれだけの企業があるのかをみんなで調べようってなる。で、そこから投資を始めていくという話なんですけど。

要するに、コンビニ銘柄を直接買うのもいいですし、コンビニの中にも実はものすごく優良企業がたくさんあるということなんです。

小林: 皆さんはセブン-イレブンで、最近コーヒー買われたことありますか。新しくコーヒードリップのサービスができたんですよ。結構おいしくて100円で飲めるドリップなんです。

じゃ、セブン-イレブンにコーヒー豆を納めている企業はどこなのか。それとか、ドリップコーヒーの機械をつくっているのはどこなのか。そういうところに目を向けるのが、投資のおもしろいところなんです。みんなの思考の一歩先を行くと、結果としてリターンを得られるというところが、投資の醍醐味かなというふうに思っています。

三井: 電車の中でも皆さんスマホでゲームとかされていると思いますけど、ニュースでも話題になったガンホー株の上昇は、そこから来ているわけです。最近ですと、コロプラさん。『魔法使いと黒猫のウィズ』のダウンロード数が上がっていることを、やっていらっしゃる方は確実に知っているんですけど、それを経済とつなげて考えることはあまりされていない。ろんなところにお宝情報が落ちているなというのは感じます。

小林: 三井さんにとっての投資の醍醐味はなんですか。

三井: 私は、公正かつ中立な立場で投資情報を提供している会社でリサーチレポーターをしますので、自分が推奨する銘柄についての取引はしないようにしています。そのため、自分が推奨して銘柄を買ってくださった方に対して運命を共にできないところはありますが、その分、買ってくださった方に「ありがとうございました」と言われたときに、やっぱり良かったなと感じますね。

また、普段からアンテナはなるべく張るようにしているんですけど、私の最近のNISAでおすすめかなと思っている銘柄は、皆さんの分かりやすいとこだとドトール日レスさん。昨年、夏が暑かったじゃないですか。で、暑いと皆さんやっぱり喫茶店とかに入る機会が増えるので、スタバさんがものすごく甘いものや冷たいフラペチーノで躍進しまして、業績も伸びて、すごい今株価がいいんです。

ドトールさん、正直ちょっと乗り遅れちゃったんですよね。ただ、最近「星乃珈琲店」というお店が駅前にかなり増えているのをご存知でしょうか。分厚いホットケーキを出すお店でテレビでもたびたび紹介されていますが、実はあそこもドトールさんの経営なんです。ドトール、エクセルシオールになかった、女の子がデートでも使いたい、「ホットケーキとコーヒー」という業態ができてきたことで、今、すごい新店が増えています。これが、次の決算が期待できるかなと思っています。

小林: エクセルシオールカフェって、なんかスタバっぽい高級な感じがするじゃないですか。僕も実際にエクセルシオールカフェに行くと、女子高生が「エクセはやっぱドトールとは違うよね」っていう話をしているんですよ。でも、実はもとをたどってみると、エクセルシオールは実はドトールがやっているんです。

三井: そうなのです。同じなんです。

小林: 実は同じ豆かもしれない(笑)。そういう日常生活の中で、「エッ、この企業は実はこの企業の傘下だったんだ」とか、「この企業はこんなことをやってたんだ」っていうところに面白さがある。投資家的な視点を持つということは、投資をやるかやらないかにかかわらず、日常生活に非常に彩りを加えるのかなというふうに思っています。

東大流投資術とは「がまん」と「発想の転換」

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三井: まさに『インベスターZ』の主人公なんか、投資っていうのに触れて、知的好奇心を満たしていき、受験勉強だけじゃ得られない、エキサイティングなことに触れている最中ですよね。

三田: 僕が最大限考えることは、どうやったらおもしろくなるかっていうことです。主人公の中学一年生が、株の世界でいろいろ儲けた、損したっていうことには、実は読者はあんまり興味がないのかもしれない。では、何を読者がおもしろいと思うかっていうと、主人公と感情が非常に同化したとき、シンクロしたときに読者はおもしろいっていうふうに感じるんです。

シンクロさせるにはどうしたらいいかっていうと、皆さんが日ごろ思っていることや疑問をちゃんと掬って取り上げていくことです。たとえば何かに対する怒りでもいいです。何かに対する読者の怒りと、主人公の考え方をどうシンクロさせるか。そこに一番おもしろいと思わせるポイントがあるんですね。ぜひ期待して読み進めていただきたいです。

三井: では、最後に「東大流投資術」と今日は銘打っているんですが、東大流投資術というのは一体何なのかということについてちょっとトークしていきたいなと思います。ズバリ何なんですか、東大流投資術。

小林: ひとつは自分の本当に信頼できる企業のみに投資するということでしょうか。やっぱり自分の目に見えるもの、見て手にとって感じ取れるものに投資したいという気持ちが強いです。たとえば何かシステムをつくって売っているB to Bの企業もたくさんあります。僕は学生なので、それが実感としてよく分からないんですよ。自分がよく分からないものに投資するというのは、僕はあんまり好きじゃない。

株って、結局「今どうなっているか」じゃなくて、「これからどうなるか」を見るものなので、僕は自分が納得出来ないストーリーや将来への不安がある企業には投資したくないなあと思います。やっぱり自分の中で信頼できる企業にしか投資したくないし、一生懸命がんばってがんばってバイトして貯めた10万円のお金が、一夜にして1万円とかになったら本当に悲しいわけです(笑)。そういう中で、自分が予期できないリスクは避けていこうと考えています。

僕の所属しているゼミでは、一つの銘柄、一つの業界を調査するのにだいたい数十時間から数百時間かけます。投資って、おそらくパソコンが何台も置いてあって、それに一日中張り付いて、毎日ものすごい量のデイトレードをしているというイメージがあるんじゃないのかなというふうに思うんですけど、僕たちはものすごく時間をかけて、企業や業界を調べあげるということを非常に大事にしています。効率が悪いと思う方はいるかもしれませんが、学生なりに、学生の長所を活かした投資方法だと考えています。

この、「ものすごい時間をかける」というのが、ある意味東大流と言えるかもしれません。世間一般の投資家は、仮に何か一つの企業を買うのにも、何十時間、何百時間と時間をかけて買っているかっていうと、実はそうでもないのかなと考えています。そういう中、僕らはたくさんの時間をかける。

東大って、受験の科目数が非常に多いし、基礎的なことをもとにしたものが多いんです、ほかの大学に比べると。東大受験生は、天才も一部にはいますが、多くの東大生は、我慢してそれなりに時間をかけて勉強する必要があります。時間をかけて基本的なことを徹底的にやるというのはある意味東大生のDNAに刻み込まれていることかもしれません(笑)。

あともう一つは、日常生活の見方を変えるというのがすごい重要なのかなと思います。セブン-イレブンに納めている会社を探してみようとか、星野珈琲店を経営しているのは実はドトールだとか、そういうちょっとした見方を持って、情報収集に手間をかけるだけで、投資の結果にもつながる。そういう見方を変えるっていうのが、東大流投資術の一つなのかなというふうには考えています。

このように、「東大流」と銘打ちながら非常にありふれたことなんですけど、ありふれたこと、基礎的なことを多くの人はできないので失敗する。受験とも似てますね。

三井: ありふれた生活が、ありふれたものじゃなくなっていくわけですね。

小林: そう。だから、東大生だからできるなんていうことは一切なくて、今日やろうと思えば誰でも今すぐできることなんですね。

三井: 誰もが今すぐにでも始められる考え方ということで、ぜひ皆さんも、これもご縁ですから、トライをしてみていただきたいなと思います。

〈了〉

※当記事に採録された発言及び見解は、イベントが行われた2013年12月20日時点のものであり、また、特定の証券又は金融商品の売買の推奨及び勧誘を目的としたものではありません。

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    小林大輝 (こばやし・ひろき)

    東京大学教養学部文科Ⅱ類2年(2012年度入学)。投資をテーマに据えた「瀧本ゼミ」代表。純ファンダメンタルズに基づく長期投資を投資スタイルとしている。2013年10月に行われた、外資系投資銀行Barclays主催の投資コンテスト「バークレイズアナリストカップ2013」では優勝に輝いた。

  • ☆写真1(三井さん)


    三井智映子 (みつい・ちえこ)

    フィスコリサーチレポーター。北海道小樽市出身。NHK教育「イタリア語会話」でテレビデビューし、2011年東京モーターショーにてMCデビュー。現在はテレビ、CM、舞台などで活動。2013年11月大阪新歌舞伎座、2014年1月「五木ひろし特別公演」に出演。また、2013年テレビ朝日「白虎隊」「濃姫2」、2014年テレビ大阪「たかじんNOマネーBLACK」にも出演。2012年10月からフィスコリサーチレポーターとしてYahoo!ファイナンスで株価予想などを行うほか、テレビ、雑誌、Webなど活動の場を広げている。2013年講談社より『最強アナリスト軍団に学ぶ ゼロからはじめる株式投資入門』を出版し、「美人過ぎる金融アナリスト」として話題に。女性らしい銘柄選びと、わかりやすい初心者向けの説明やセミナーを得意とする。

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