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2015/10/08 00:00

フィンランドと同じように 日本も「起業大国」になれる! ~SLUSH ASIA代表 アンティ・ソンニネンさんインタビュー

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財前のインタビューコーナー、3回目はフィンランド人のソンニネンさんだ。2015年4月に東京で開催された「SLUSH ASIA」というスタートアップイベントを成功させ、「日本の起業家は、これからどんどん元気になる!」と話すソンニネンさん。どういう変化が待ち受けているのか、日本のベンチャーをめぐる最新の動きを聞いた。

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財前:ソンニネンさんは、フィンランドで行われているスタートアップイベント「SLUSH(スラッシュ)」のアジア版、「SLUSH ASIA」の日本代表です。2015年4月に東京で初めて開催され、すごく盛り上がったそうですね。そもそも、SLUSHってどんなイベントなんですか。

ソンニネンさん:SLUSHは起業家やイノベータ―のためのイベントです。フィンランドで大学の起業家サークルの仲間たちが2008年に始めたのが、あっという間に規模が大きくなりました。人気になった理由は、ネクタイを締めて参加するお堅いイベントと全然違うものだったから。起業家は英語でスピーチし、舞台は派手なライティングと音楽で演出されて、まるでロック・コンサートのよう。スピーチが終わると歓声が上がり、拍手が沸き起こって会場が熱気に包まれます。

「新しいアイデアを発想し、挑戦する人はかっこいい。起業家はスターだ!」というイメージを広めたのが、SLUSHの大きな功績ですね。2014年には78カ国から1,300の企業と1,400人以上の人々が参加し、北欧最大のスタートアップイベントになっています。

財前:僕もベンチャー投資の勉強をするために何人かの起業家にお会いしましたが、皆さんアイデアが豊富で行動力があって、本当にかっこいい。でも日本では、起業家の話を聞く機会が少ないし、芸能人やスポーツ選手のように若者が憧れる対象でもありません。

ソンニネンさん:フィンランドでもそうでしたよ。だからSLUSHにみんなが驚きました。フィンランド人はもともと安定志向が強く、失敗を恥ずかしがる傾向があります。特にノキアが成功してからは、ああいう大企業に就職することを親が子供に勧めるようになりました。しかし、世界の携帯端末市場でトップだったノキアは、アップルが創り出したスマートフォンのブームに乗れず、携帯電話事業をマイクロソフト社に売却するほど落ち込んでしまいました。人口500万人ほどの小国・フィンランドにとっては大打撃で、しかもノキアに続くグローバル企業がありませんでした。不景気が続く中で、一部の若者が「落ち込んでいても仕方ない。それより、自分たちで何か新しいことを始めよう」と立ち上がりました。その流れの1つが、SLUSHなのです。

財前:フィンランドの逆境から、SLUSHは生まれたんですね。

ソンニネンさん:今では、首相も参加するほど重要なイベントになっています。その影響で起業家を目指す若者が増え、実際に成功例も出てきています。特にスマートフォン向けのゲームは好調で、『アングリーバード』の「Rovio Entertainment」やソーシャルゲームの「Supercell」など、グローバルで活躍するベンチャーが生まれました。

財前:すごい変化ですね!フィンランドの熱気が伝わってくるようです。ソンニネンさんは、どうして日本でもSLUSHをやろうと思ったのですか。

ソンニネンさん:一言でいうと、5年前のフィンランドと今の日本がそっくりだからです。

財前:フィンランドと日本が似ている? あまり共通点があるとは思えませんが……。

ソンニネンさん:2013年に仕事のために日本に引っ越してきたとき、まるで停滞していたころのフィンランドを見るようだと思いましたよ。ノキアがマイクロソフトに買われたとき、年輩の人はみんな「もうフィンランドは終わった」と嘆きました。私たちが「でもiPhoneは便利だし」と使っていたら、「フィンランド人のくせに!」と言われたくらい落ち込んでいました。

日本人もいま、同じように傷ついているように見えます。大企業が輝きを失って、人々はいつまでも「ソニーはどうなる」と昔を振り返っています。ですから、フィンランドと同じようにSLUSHで変化を起こす必要があると思ったのです。

財前:日本でのSLUSH ASIAは、どのようにして始まったのですか。

ソンニネンさん:フィンランドのSLUSHで、Mistletoeの孫泰蔵社長がスピーチをしたときに食事をし、「このエネルギーを日本に持っていきたい」と盛り上がったんです。その後、2015年に入って仕事の関係で時間ができたこともあり、本気でやってみようと思いました。それで皆さんに声をかけたら、孫さんをはじめ、イベントプランナーの天野舞子さんらそうそうたる人たちがチームに加わってくれました。

ただ、4月の開催に向けて動き出したのが1月中旬で、会場が全然空いていない。自前でテントを建設することにしたのですが、増えた分の予算のスポンサーを見つけなければいけない……。かなり追い込まれた状況でしたが、コアになる協賛企業がぎりぎりで見つかってお金も人も出していただき、何とか乗り切れました。

財前:間に合って良かったですね! 皆さんの情熱がスポンサーに伝わったのでしょうか。

ソンニネンさん:最初は、ほとんどの企業から「大丈夫か」と心配されました(笑)。でも何度も話をして、「本当にやるつもりだ」という思いが伝わったときに「それなら手伝う」と言ってくれましたね。これは事業のスタートアップにもあてはまるのですが、人って簡単に達成できる目標に対してはあまり関心を持ちません。ふつうに考えると無理だけど、すごく頑張れば何とか達成できそうな、大きな目標に向かう姿を見たときに応援したくなるのだと思います。今回はまさにそうで、私たちのチャレンジに共感してもらえたのでしょう。

財前:他に大変だったことはありますか。

ソンニネンさん:イベントを英語で行うことに対して、スタッフの不安が大きかったですね。日本人の起業家は英語ができないから、日本語の原稿を映し出すプロンプタを用意しようとみんなが言いました。でも、私は反対しました。同時通訳のレシーバーを置こうという提案にも、だめだと言いました。それでは、日本人の心の壁を突破できないからです。

財前:日本人は英語への苦手意識が強い。プロンプタを用意しておきたい気持ちは分かるなあ。

ソンニネンさん:フィンランドだって、母国語はフィンランド語で英語が苦手な人は大勢います。SLUSHが始まったころは、みんな拙い英語で参加して少しずつうまくなりました。今では、MCみたいにかっこよく話せる人が増えたし、シリコンバレーとか他の都市に出掛けていって同じようなイベントを開く若者も出てきました。日本人は失敗に対して慎重過ぎます。すぐに英語を「できない」と思い込むのは良くないくせです。実際にやってみれば意外とできるし、得られるメリットはとても大きい。

(c) Jussi Hellsten www.jussihellsten.com www.facebook.com/jussihellstenphotography

逆にいうと、多くの人が英語を避けることで損をしていると思います。日本語が話せる私ですら、日本に来たときには、名刺交換も全て日本語で、日本人のネットワークに入っていくのはちょっと大変そうだなと思いました。実際にビジネスをしてみても、多くの企業が国内ばかりを見ていて、海外での収益がとても少ない。ベンチャーも、最初から国内市場だけを狙って起業するパターンが多い。今は最先端の技術や情報が海外のウェブサイトにあったりするので、そういう意味でも国内ばかり見ているとどんどん遅れてしまう。もっと気軽に英語を使って海外に目を向ければ可能性が広がるのに、とてももったいないと思います。

財前:英語を使うというのは、ソンニネンさんにとって譲れない条件だったのですね。

ソンニネンさん:そうです。みんなの不安を減らすために、練習用のセッションを2回開催しました。そうすると、最初は台本をそのまま読み上げていたのが、2回目には少し慣れて、本番はめちゃくちゃかっこよかった。そういう起業家の成長ストーリーがあったのも良かったですね。

財前:SLUSH ASIAの当日の様子はどうでしたか。

ソンニネンさん:興奮したよ。素晴らしかった! メインステージではレーザービームが飛び交い、スモークマシーンから煙が上がる中、IDEOの共同創業者 Tom Kelly氏やDeNA創業者の南場智子氏ら、世界中から集まった30人の起業家が登壇しました。他にはスタートアップのピッチコンテストや、製品を披露するデモステージなどがあり、外では屋台がにぎわい、まるでお祭りのようでしたね。企画した当初は1000人くらいの規模を想定していましたが、最終的には3217人が来場しました。

(c) Jussi Hellsten www.jussihellsten.com www.facebook.com/jussihellstenphotography

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財前:日本でも本格的な起業ブームが起きるのでしょうか。

ソンニネンさん:SLUSH ASIAの成功以来、英語で開催される投資イベントが増えています。はっきりと変化を感じるし、いま日本にいてこのムーブメントに立ち会えるのはすごくラッキーだと思います。シリコンバレーからなぜ次々と素晴らしいベンチャーが生まれるのかというと、世界中から才能ある人材が集まって競い合うからです。日本で起業ブームが起きていることが広まれば、同じように世界中から人が集まってきます。SLUSH ASIAをもっと盛り上げて、毎年海外からたくさんの投資家やビジネスパーソンが訪れ、面白い企業を見つけて帰るようになってほしい。日本のベンチャーも、最初から「世界一」を掲げて、どんどん海外に出て行ってほしいですね。

財前:日本のベンチャーへの投資環境をどう見ていますか。

ソンニネンさん:日本のベンチャーはお金では困っていません。フィンランドでは5億円以上の資金調達は海外に頼るしかありませんが、日本では1つのベンチャー企業に何十億という投資が国内でなされています。ただ残念なのは、スタートアップの件数がまだ少ない上に、投資家が国内市場ばかりを見ているので、優秀なベンチャーがあると投資が集中することです。それで時価総額が上がって、上場すると一気に下がるようなケースもあります。ですから、スタートアップの数を増やすこと、投資家が海外に積極的に出ていくことを両方進めれば、もっと資金を有効に使えると思います。

財前:なるほど。僕ももう少し、海外の投資先を研究しないといけませんね。最後に、若い人に向けて何かメッセージはありますか。

ソンニネンさん:私は、若い人にとても期待しています。SLUSH ASIAは、中学生、高校生のボランティアがたくさん手伝ってくれて、大きな力になりました。みなさんに言いたいのは、親や先生が言う以上に、あなたには能力があるということです。大人はよく「まだ若すぎる」「もっと経験を積んでから」と言いますが、興味があればすぐに起業したっていいと思います。フェイスブックを作ったのは、19歳のザッカーバーグです。彼は年齢が若く、経験もありませんでした。ただ、未来を変えるユニークな技術を思い付き、ビジネスにしようと行動しただけ。それが世界を変えたのです。

ですから、あなたにもしやりたいことがあるのなら、社会や周囲の大人が言う常識を外れて、少し違う道に進んでみてもいいかもしれません。もちろん、全ての人に退学を進めるわけではないですよ(笑)。そういう選択肢もあると言いたいのです。来年のSLUSH ASIAはさらに大きな規模で開催するので、ぜひ会場に見に来てください!

  • スラッシュアジア代表 アンティ・ソンニネンさん

    フィンランド出身。世界的な大ヒットモバイルゲーム『アングリーバード』を生んだフィンランドのゲーム会社「Rovio Entertainment」日本法人代表を経て、ベンチャー企業・起業家を目指す若者を支援するイベント「SLUSH ASIA」を指揮

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