なぜ投資で負けてしまうのか、重要だったのは「論理思考力」!?
投資といえば運要素も重要になってきます、ただだからといってやみくもに行うのは非常に危険。
今回は負けを減らすためのテクニックを皆さんに伝授します!
回答者
マネックス証券株式会社 チーフ・ストラテジスト 広木隆
Q. 不確実だと、始めるのが恐い……。
A. 不確実なものだからこそ、論理が大切!
不確実要素が多くて正確に見通せないのなら、当てずっぽうで投資してもいいのではないか。そう思うかもしれない。どうせ当たらないのなら運に身を任せて投資する、それもひとつの手だ。それでもやはり、考えを尽くして自分なりの論理を築いたほうが、成功する確率は高いと私は信じている。
実際の経済を見ていると、たいていは理屈で説明できないことによって動いていると実感する。株式相場も同じだ。理屈できれいに説明できる部分は、せいぜい2割程度である。残りの8割は、人の力ではどうしようもないところで動き、それゆえ正確に予測することができない。
だからといってあきらめてしまっては、おしまいである。それでも2割は理屈で動くのだ。そこに頼って考えを進めるしかない。
ひとつのコップに、水が入っている様子を想像してもらいたい。水はコップ全体の2割程度まで注がれている。触れたり味を見たりすることができる水は、理屈で捉えられる部分にあたる。コップ内の残り8割を占める空の部分は、理屈では説明できない事柄に相当する。
8割の空の部分について知るには、どうしたらいいか。そこには何もないのだから、いくら入念に探ってみても成果はない。それよりも、コップの2割に水が入っている事実に目を向ける。2割の水の存在をよく認識し、しっかり観察するのだ。存在しない8割をはっきり捉えるには、実在する2割をしっかり見る以外に方法はない。
株式相場は、運や偶然に大きく左右される世界である。だからこそ、自分なりの理屈や理論を持ち、それが確固としたものになるまで突き詰める必要がある。
もちろん、理詰めで考えても失敗するときは数多い。8割は理屈が通らない世界なのだから当然だ。それでも長い目でみれば、理論やデータに基づいて科学的アプローチをしたほうが、そうしなかったときと比べて、結果は伴ってくるものである。
Q. 「勝つ」ための心がまえと戦略は?
A. 未来は読めないが、ほんの一歩先なら微かに見える。
自分なりの視点を持ち、大局観をもって論理的に思考するのが投資の極意。ならばあとは日々勉強を積み重ねたい。ただ、あまり勉強ばかりだと、かえって視野が狭くなってしまうので注意が必要。ときに脇目を「ふる」くらいでちょうどいい。
テレビや映画を観たり、街中を散策をしてみたり、友人知人とじっくり話し込んだり。そうした何気ない行動にこそ、社会や経済の流れを読むヒントが含まれている。それに、心にゆとりがないと、人は道を誤りやすい。投資をするうえで心の安定は欠かせない要素である。
プロのトレーダーは、負けたり損をするのも仕事のうち、3つ投資をしていたら2つまでは負けていい、残りひとつに勝てればオーケーくらいの心づもりでやっている。初心者ほど、買ったからには儲けたいという思いが先に立ってしまい、失敗時のゲームプランを準備していない。自分のシナリオが現実とズレたとき、心理面でも実際の行動においても“プランB”を用意しておくべきだ。
さらにもうひとつ、投資に勝つためには、「一歩だけ先を見る」という姿勢が大切である。
2012年、政権が変わりアベノミクスが始まる少し前に、私は「相場はいまが底。今後に期待が持てる」とリポートを発表した。実際、翌年から相場は上向いた。なぜ当てられたか。一歩だけ先を見たからだ。
IMF(国際通貨基金)など国内外の経済指標が上向き傾向を示していたし、社会情勢も近く総選挙があり風向きが変わることは予想できた。それらを総合し少し先を眺めてみた。
一つひとつの事象は目新しくないし、だれでも得られる情報ばかりだが、それらをまとめて眺め渡し、自分なりによく考えてみれば、少し先のことの予想は立てられる。ずっと先に相場や世の中がどうなるかはわからない。だが一歩先のことなら、手がかりはなんとか見つかるものだ。
まだ見えない未来をなんとか覗いてみようと思うのなら、目の前にある「見えているもの」を、改めてよく見て観察し、そしてよく考えること。そうすれば、おぼろげにでも、視界は開けてくる。
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ひろき・たかし
マネックス証券
チーフ・ストラテジスト*
1963年東京生まれ。
国内外の金融機関で資産運用などに携わった後、2010年より現職に。
著書に『9割の負け組から脱出する資産の思考法』(ダイヤモンド社)、『ストラテジストにさよならを』(ゲーテビジネス新書)。
*経済動向などを分析して投資の具体的戦略を設計する立案者のこと。
文・構成/山内宏泰
出典 インベスターZ 2巻巻末記事より