不透明な時代の今、どう働けばベストなのか? 正直、誰もが“正解”を探している……ならばトップの人たちにそのヒントをもらおう! ビジネス漫画の第一人者・三田紀房がこれからの働き方に迫ります!!
今回対談に応じてくださったのは、ライフネット生命代表取締役会長兼CEOの出口治明氏です!
自分の天職などわからない。だから何かの縁を信じたほうが楽しい。
三田 出口さんは35歳の時、将来は社長になると思ってましたか。
出口 いやいや、全然(笑)。就職も成り行きでしたし、※1 いくつでも自分のやりたいことがハッキリ分かってる人なんて稀じゃないですか?
三田 僕も同じ意見ですね。
出口 プロ野球選手になりたいといった明確な夢を持ってそれを叶える人生も素敵だと思いますが、ほとんどの人は自分の適性なんてわからない。※2 だったら何かしら縁があったら、それを大事にするのがいいんじゃないかと思います。
三田 会社を興した起業家というと、成功するためのプロセスをしっかり着実に歩んできたようなイメージがありますが、出口さんは、 その…※3
出口 真逆ですね(笑)。 会社を起業したのも、友人の紹介で出会った方に、保険会社をゼロから作りませんかと誘われたことがキッカケでしたから。
出口治明氏
三田 それまで会社員経験しかなかったのに、起業しようと思った決め手はなんだったんでしょうか?
出口 相手が、とても感じのいい若い方だったんですよ。 若い人から自分が60歳近くなってからこんなおもしろい誘いを受けるのは、何かの縁に違いないと思ったんです。※4
三田 言うなれば、フィーリングで決めたワケですね。でも今って、自分のフィーリングを信用しない風潮がありますよね。 何か判断する前にあれこれ調べて、それを選ぶ理由を用意しようとするというか。 マンガを買う時もまずはネットの評判をチェックして、「いい」と言われてるものしか買わない人が多いそうですよ。
※1 司法試験に浪人中だった出口氏が仕事内容も知らずに日本生命へ入社したのは偶然だった。今でこそ日本一生保に詳しいと言われる出口氏だが、「この仕事が天職だったのか今の年になっても分からない」
※2 「社会人も就活中の人も、社会のことのみならず自分のことすら本当に分かっている人なんて、そういない。でも就職すればプロなのだから給料をもらっている分、その道に精通するのは当然のこと」(出口氏)
※3 講演で「夢に向かって頑張れ」とはけっして言わないという三田氏が漫画家を志したのは30歳の時。出口氏も「3年後にこれして、5年後にはこうなって…と先が見える人生が一番つまらない」と語る。
※4 会社を辞めるリスクについて出口氏は「日本で、健康でいて、ちゃんと働けば食いっぱぐれることはまずないのだから、長い目で見れば失敗なんて怖くない。たとえフラれたって、その経験で次の恋が充実しますから(笑)」