エディー・ジャパンの荒木コーチ直伝 五郎丸の「メンタル」は誰でも手に入れられる!

いよいよ受験シーズンの到来。これまでの努力の成果を発揮する瞬間がやってくる。ただ、勉強面での準備は万全でも、「受験本番にいかに立ち向かうか」という対策は手付かずだったりするもの。そこで<『ドラゴン桜』の受験直前対策>として、ラグビーワールドカップ2015で大躍進した日本代表のメンタルコーチを務めた荒木香織さんに、「本番に強いメンタル」を鍛えるポイントを聞いた。「自分は本番に弱いかも」という自覚がある人、必見ですよ!

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ここがポイント

・五郎丸選手のルーティンは”お祈り”ではなくメンタルの準備である
・本番でのパニックは練習で克服できる
・「ミスしちゃいけない」「合格したい」と思ってはいけない

「五郎丸ポーズ」は
”お祈り”でも”ゲン担ぎ”でもありません!

私はラグビーワールドカップ2015の日本代表のメンタルコーチとして、選手たちのメンタル強化に3年半かけて取り組みました。
その成果の一つが、五郎さん(五郎丸選手)と一緒に作り上げた「ルーティン」です。
メディアにもよく取り上げられて嬉しいんですが、実は誤解されていることも多々あります。というのも、いわゆる「五郎丸ポーズ」自体に意味はないんです。見た目の印象から “お祈り”や“ゲン担ぎ”のように受け取られがちなんですけど、そういう要素は全くありません。
だから受験生の皆さんも、試験会場でこっそり真似しちゃダメですよ(笑)。何の効果もありませんから。

では、あれは一体何なのかというと、正式には「プレ・パフォーマンス・ルーティン」といいます。ある特定のパフォーマンスの前(=プレ)に、一連の確立された動作を遂行することによって、それに続くパフォーマンスを安定・向上させることができる、というスポーツ心理学の理論に基づいたものです。
五郎さんの場合は、(1)ボールを2回まわしてセット、(2)3歩下がって、2歩横へ、(3)蹴った後をイメージする(右腕をふり、腰をかがめる。ここがいわゆる「ポーズ」の部分)、(4)体重移動(右足から助走に入る)、(5)助走は8歩、という5つの動作を行っています。

五郎丸選手のメンタルは、
入念に「準備」されたものである

「ルーティン」にはいくつかの効果があるんですが、例えば、一連の動作に集中することで、「外的(スタジアムの大歓声や相手チームの動き)および内的(不安や心配)な障害を取り除くことができる」ということが挙げられます。
なので五郎さんは、ボールをセットする動作に入った瞬間から、周囲の音は何も聞こえないし、ドキドキもしない。ルーティンそのものに集中することができていますから、その結果としていわゆる「無の状態」に入ることができます。

少しややこしいんですが、ルーティンはキックを「成功させるため」に行うのではありません。大切なのは、ルーティンそのものをうまく遂行できるように集中することです。なぜなら、その状況でコントロールできるのは、その瞬間の自分の行動だけですから。
どれほどうまくキックできたとしても、突風が吹けばボールはゴールを外れます。であれば、意識を「結果」に向けることには、はっきりいって意味がありません。
だから、自分でコントロールできないことにエネルギーを費やすのではなく、自分でコントロールできること、つまり理想的な結果に結びつくための「過程(=いま)」に全力を尽くす。ルーティンの意味はそこにあります。
五郎さんは3年半という長い時間をかけて、「常に理想の状態を再現できるルーティン」を確立しました。あのルーティンは、W杯という大舞台で実力を発揮するために、膨大な時間と努力を積み重ねて入念に「準備」してきたものなんです。

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パニックにならないために、
事前に「練習」しておく

メンタルの強い・弱いには、生まれつきの部分も確かにあります。でも、メンタルが弱いからといって諦める必要は全くありません。正しく鍛えれば、いくらでも改善することはできるんです。
メンタルを鍛えるということは、一言でいうと「自分を理解する」ということです。どういう状態のときに自分は力を発揮できるのか、逆にどういう状態になってしまうと自分はダメなのか。そしてダメになったときにどうすれば立て直すことができるのか。メンタルが強いというのは、あらかじめそういう「準備」がきちんとできている、ということなんです。
その意味では、受験はものすごく準備がしやすいものではないでしょうか。なぜなら普段の勉強の中で、本番に起きそうなことをいろいろ想定して練習することができますから。例えば「もう試験終了まで残り3分しかない!やばい!どうしよう!・・・の練習」とかもできますよね(笑)。
つまり、普段の勉強を単なる知識の吸収に終わらせず、「本番のための練習」にしなくてはいけないんです。

受験本番での深刻な状況として、難しい問題に遭遇して「どうしよう、わからない」とパニックになることって考えられますよね。でも「問題の解き方がわからない」という場面は本番に限ったことではなく、普段の勉強の中でもいくらでもあるはずです。だったら、そこでうまく立て直すための練習をすればいいわけです。
こういう場合の対処方法は人それぞれでしょうけど、「あ、いまパニックかも」と気づいたら一度手を止めて深呼吸をしてみるというのはとても有効ですし、「ちょっと他の問題に移ろう」というのもアリですよね。
でもそれを本番でいきなりできるかというと、残り時間を気にしてしまって、そうやってリラックスすることすらできないかもしれない。だから普段の練習が大切なんです。
特にこの時期は過去問に取り組んだりするでしょうから、練習のシチュエーションとしては最高だと思います。

受験の本番は「合格したい」ではなく
「発表会だ!」と思うべき

特別な準備をしなくても本番で平常心を保てる人がいる一方で、めちゃくちゃ本番に弱いタイプの人もいます。本番に弱くなる原因は何かというと、要するに自分への期待度が高すぎるんです。こういう人の場合、焦る必要がないところで「自分はもっとできるはず」と焦ってしまい、「頭が真っ白」になって本来の実力が出せないということが起こってしまいます。
あと、本番に弱い人に特有の思考というのもあって、「ミスしちゃいけない」と思いがちなんです。これのどこがダメかというと、頭の中が「ミスしちゃいけない」という考えでいっぱいで、「いま自分は何をすべきか」ということを考えていない。これでは実力なんて出せるわけがないですよね。

なので、受験本番では「合格すること」を目的にしてはいけません。極端なことをいうと、「絶対に合格したい」と強く思えば思うほど、たぶん落ちます。だって受験本番でいちばんやるべきことは、何よりもまず「目の前の問題に立ち向かう」ことでしょう。
これはスポーツでも一緒ですけど、勝負には必ず相手がいるので、いくら自分が力を発揮してもどうにもならないことはあります。
でも、その日のために練習してきた内容を一つずつ丁寧にやっていくことであれば、自分でコントロールできますよね。受験でいえば、長い時間をかけて勉強してきたことを駆使して、とにかく目の前の問題を解く、ということです。だから、受験の本番は「発表会」だと思うべきなんですよ。
「自分はこんなに勉強してきたんだから絶対に大丈夫」という気持ちで、「さあ、やってきたことを見せるぞ」という勢いで本番にのぞむことができれば、それはもう存分に実力を発揮できるし、その結果としてきっと合格にたどり着くことができるはずです。
ですから受験生の皆さん、「ミスしたらどうしよう」なんてつまらないことは考えずに、いま目の前にある本番を楽しみましょう!



  • 荒木 香織(あらき かおり)

    1973年京都生まれ。日本大学卒業。学生時代は陸上の短距離選手として国内トップレベルで活躍。大学卒業後に渡米し、ノーザン・アイオワ大で修士課程修了、ノースカロライナ大学グリーンズボロー校でスポーツ心理学博士課程修了。シンガポール・南洋工科大学専任講師などを経て、現在は兵庫県立大学環境人間学部准教授。
    ラグビーワールドカップ2015で日本代表のヘッドコーチを務めたエディー・ジョーンズ氏に招聘され、メンタルコーチに就任。初戦で南アフリカを破り、予選で全3勝を挙げるなど、「歴史を変える」活躍をした日本代表をメンタル面でサポートした。来春には2冊の自著を刊行予定。

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