どうせやるならトップを目指せ! 【vol.2 三田流マンガ論】

あなたはマンガ家という職業にどんなイメージを抱いているだろうか? 夢がある。アシスタントと一緒に朝まで徹夜する。編集者が遅れた原稿を取り立てに来る――。確かに、それがふつうのマンガ家像だ。しかし、三田紀房さんは正反対の持論をしばしば展開する。「徹夜はしない。でも締め切りは守る」「マンガ家になったのはお金のため」「アイデアを得る努力をしない」。びっくりするかもしれないが、理由を聞けばきっと納得し、あなたの仕事や勉強にも役立つ話だと気が付くだろう。さっそく、三田流マンガ論をお聞かせしよう。

☆写真1(三田さん)


【マンガ論 Vol.2】どうせやるならトップを目指せ!

・“そこそこの成功”は危険だ

・無理と思っても「1位」を目指す

・大先輩から技をパクれ

前回は、マンガ家が読者のニーズにいかに応えるかを説明した。 しかし、私だって最初から読者の心をつかむ技法に長けていたわけではない。ある出来事をきっかけに真剣に試行錯誤した結果、今があるのだ。

『クロカン』という私の初期の代表作がある。 田舎の高校野球部が甲子園を目指すストーリーで、「うまくなりたきゃ金払え!」と高校生にお金を払わせる、型破りな監督が主人公だ。当時『週刊漫画ゴラク』に連載されていたこのマンガは、私がずっと温めていた「高校野球の監督を描きたい」という企画が実現したもの。途中で月刊連載から週刊連載になるというラッキーにも恵まれた。

☆マンガ1(1)
☆マンガ1(2)


週刊連載に切り替わるタイミングで、新しい編集者が担当になった。 彼は私に会うなり、「『クロカン』を、漫画ゴラクを代表する作品にしましょう!」と熱く語った。具体的な目標は、読者アンケートで1位を取ることだと言う。最初は無理だと思ったが、何度も「三田さんならできる」と励ましてくれる彼の情熱を意気に感じ、どうすれば1位になれるかを考えるようになった。

同時期、『週刊漫画ゴラク』で圧倒的な人気を得ていたのが、金融マンガ『ミナミの帝王』(原作・天王寺大、作画・郷力也)だった。私は『ミナミの帝王』を読み込んで研究し、3つの手法を取り入れることにした。1つ目は登場人物の「デカイ顔」。そしてその横に書かれた「決めセリフ」。『ドラゴン桜』でいえば「5年後、東大合格者を100人出します!」のような印象的なセリフを、毎回1つ入れるように心掛けた。3つ目は、ベタな絵を使った「比喩」で状況を説明する手法だ。

☆マンガ2

今では私のマンガの特徴のように言われているこれらの手法は、実は『ミナミの帝王』をパクって始めたのである(ちなみにマンガ界では、他人の手法を真似るのは決して悪いことではない。むしろその手法が評価されたとして、真似された側が喜ぶことのほうが多い)。

結果、『クロカン』は読者アンケートで1位となり、大成功を収めた。今でも『クロカン』が一番好きだと言ってくれるファンは多い。私はその編集者を2つの意味で恩人だと思っている。

1つは作品をヒットさせてくれたこと。そしてもう1つは、マンガ家としての自己改革を促してくれたことである。マンガ界は新しい才能がどんどん登場する競争の激しい業界だ。彼がいなければ、私はとっくに競争に敗れ、マンガを描き続けることができず実家に帰っていただろう。

私はもともとプロットをまとめるのが得意で、マンガを描き始めてすぐのころからそこそこの質の作品と原稿料で生活していくことができた。しかし、その「何とか食べていける」状態が危険なのである。今が“そこそこ”だからと言って現状に甘えていると、ずるずると業界での位置が後退し、いずれ他のマンガ家に抜かれて市場から淘汰されてしまう。商売も同じで、店を出してしばらくは目新しさやそれまでの人間関係の延長で意外と客は来る。しかし時間が経つと、独自の個性や工夫がない店は他の店に埋没して売り上げが落ち、閉店に追い込まれていく。

『クロカン』以来、私は読者のニーズを常に意識し、試行錯誤を続けている。それが四半世紀以上マンガ家を続けて来られた理由である。

★伝説の野球マンガ『クロカン』がウェブサイトから一部無料で読めます!  田舎の野球部が型破りな監督に率いられて甲子園を目指すストーリーは、読めば必ずハマります。  1~3巻は常時無料。4巻以降は期間限定なので、お早めにアクセスを!

http://mitanorifusa.com/freemanga/

クロカン(1)

■三田流漫画論シリーズ

【vol.1 三田流マンガ論】成功するには、あえて「空席」を狙え!
【vol.2 三田流マンガ論】どうせやるならトップを目指せ!←イマココ!
【vol.3 三田流マンガ論】ベタな表現を恐れるな!
【vol.4 三田流マンガ論】徹夜は一切しない!
【Vol.5 三田流マンガ論】クリエイターは「凄い」人たちではない。ただ「やった」人間だ!
【vol.6 三田流マンガ論】私は、締め切りを絶対に破らない!
【vol.7 三田流マンガ論】ストーリーとは、「対立」とその「解決」である
【Vol.8 三田流マンガ論】アイデアは考え出すものじゃない
【Vol.9 三田流マンガ論】マンガを描き続けることが最優先。些末なこだわりは持たない
【Vol.10 三田流マンガ論】いい仕事したけりゃ、自己管理しろ!


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